DV被害の男女差と支援

1. 概要

 夫婦間の暴力において男性に比べ、女性の被害者の方が多いだろうと想像される方は多いと思います。

 実際、データを調べたところ、内閣府男女共同参画局「配偶者からの暴力に関するデータ」という資料がありました。配偶者間暴力の被害者割合を見ると、確かに圧倒的に女性が多いです。

 ただ、殺人に限ると被害者の44.4%が男性でした。また、従来の「ジェンダー規範」に縛られていると、男性は他者に相談したり、警察に訴えたりしづらいという傾向もあると思いますので、女性の支援に加えて、男性のDV被害に対する支援の充実を望みます。

2. 内閣府男女共同参画局「配偶者からの暴力に関するデータ」

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 この資料の「5 配偶者間(内縁を含む)における犯罪の性別被害者の割合(平成30年・検挙件数)」によると、総数(7667件)の内、90.8%が女性被害者、9.2%が男性被害者となっています。

 内訳を見ると、「傷害(2684件)」は92.7%が女性、7.3%が男性、「暴行(4830件)は90.8%が女性、9.2%が男性被害者となっています。一方、「殺人(153件)」について見ると、被害者の55.6%が女性で、44.4%が男性となっています。

 全体的に女性被害者が多いため、配偶者暴力への支援体制が女性側に偏るというのは、ある程度は理解出来ます。ただ、全体に占める件数は少ないとしても「殺人」という重大事件での男性被害者割合が他に比して高くなっています

 また従来の「ジェンダー規範」を考えると、女性に比べて男性は被害を受けても他者に相談しづらいということや、まして暴行を受けたとしても警察に訴えづらい傾向があると言えそうです。

3. 男性のDV被害者支援の重要性

 そういった点も踏まえると、男性のDV被害に対する支援をより充実させることはとても重要なことではないかと考えます。「強い」「泣かない」といった「男らしさ規範」を身につけていて、相談に行かない、行けない、被害を受けても我慢している人も少なくないと思われます。

 そのような人たちに対しても、手が届くような支援が増えれば、逆説的ではありますが「傷害」や「暴行」における男性被害者の割合が高まる可能性は大きいと思います。男性は、DVの被害を受けていないのではなく、被害を受けていると主張しにくい社会の状況があるからです。

 もちろん、現状のデータを見る限り、それによって男性被害者の割合が女性被害者を上回るところまではいかないかも知れませんが、いずれにせよ、男女ともに氷山の下に隠れている被害はあるはずです。そういった被害者も声をあげられるような支援の充実を望みます。

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