No.4【靴磨きが、自分磨きに】
山形県山形市にてお店を構える靴磨き専門店「DOEK(ズック)」。
実は「BARBERS」という理髪店内にあり、男性の方は髪を整えている間に、靴磨きもできます。今回は靴を始めとする革製品をピカピカに磨き上げる、店主の櫻井さんにお話を伺いました。
靴磨きの原点は、良い靴を買ったこと
-靴磨きを始めたきっかけは何ですか?
以前、車関係の仕事に務めていた際に、そのお店を任せていただく機会があり、革靴やスーツを履く機会が多くなるだろうということで、ちょっと背伸びして良い靴を買ったんですよ。
それがきっかけで、良い靴を買ったんだから、メンテナンスをしないとなと思い、(靴磨きを)やり始めました。そこで、靴磨きというものに触れ、面白いなと思いました。
ーいい靴を買ったりすると長く使うためにメンテナンスしたいという人は結構多いと思います。ただ実際に靴磨きとなると、あまり知らない方もいらっしゃるかもしれないので、このようなお店があると知っていただければなと思います。
”靴磨き”が”自分磨き”につながる
-靴を修繕して長く使うことの良さを教えて下さい。
そうですね、もしかしたら男性と女性でそこの観点が違うかもしれないですね。もちろん女性も普段からお仕事で使われたりとか、靴を磨いて大切にされている方もいらっしゃると思うんですけど、これをやっている時間って男の人が夜な夜な、一通り家事とか仕事を終えて、ようやく自分の時間となった時にちょっと靴を磨こう、みたいな、そういうのが多いと思っていて、長く履くために靴を磨くことも大事だけど、その靴を磨いている時間って、自分と向き合っているというか、そんな気がしてしまうんですね。
そういう時間で自分の時間を作っていただいて、しっかり自分と向き合っていただく、そういう時間に当ててもらいたいですね。そうすることで、最終的に「靴磨き」が「自分磨き」になるんじゃないかなって。自分と向き合う時間を作って、また明日の一歩に繋げてもらう、そんな意味合いだと思っています。
ー男性だと、やっぱり靴は仕事のパートナーのようなものですもんね。
そうですね、相棒みたいなものですね。
さっきのきっかけの話になるのですが、靴を好きになったきっかけは先ほどお話ししたようなことなのですが、続けている理由としては、私自身が何かある時、何らかの会に出なきゃいけない時、人と会う時、会議に出る時、靴を磨いて行ってたんですよね。そういう時、なんかすごく自信を持てたというか、なんとなく気持ち的によし、靴磨いたし大丈夫だという気持ちで向き合えたので、すごく効果的だったんですね。なのでやっぱり、ぜひ皆さんに体感してほしいです。
大切な靴とずっと長く寄り添うために…
-靴を長く使うためのコツってありますか?
これについては、本当に当たり前のことなんですけど、靴べらを使って履くということです。他にも靴紐をほどいてから脱ぐとか…メンテナンス以前に、ほんのちょっとした手間をかけると、靴に負担がかからないので長持ちしますよ。
ーやっぱり基本的なことが大事なんですね。
親世代も若くなってきていますし、このような文化というか、知識を聞ける人が少なくなっているのかなと。
ー私もちゃんと靴のことについて教わる機会がなかったので、これをきっかけにいろんな人に知ってもらいたいなと思います。
ーちなみにどんなお客様が多いですか?
やはり普段から革靴を履かれているサラリーマンが多いですね。靴だけでなくバッグもメンテナンスもするので、女性の方もいらっしゃいます。
ーそうだったんですね、女性の方にとってそれは結構嬉しいことですね。
はい、男性にとっては昔から靴・時計・車が大事で靴好きな方はいらっしゃいますが、女性のステータスって靴よりもバッグだと思うので。
ーそうですね、女性にとってバッグも補修できるというのは嬉しいです。
靴のメンテナンスって分かるんですけれど、バッグのメンテナンスを自分でやるのは心配で…そういう人は多いと思うので、ぜひ利用してほしいですね。
「靴磨き」と「繕い」のこれから
ー今は買い替えの消費が多いので、もっと「繕う」ことが広まることで、環境問題や丁寧な消費に繋がるんじゃないかと思っていて、「繕う」ことが広まることで10年後、20年後の将来がどう変わっていくと思いますか?
これからますますビジネスカジュアルみたいなものが広まっていくと普段から思っていて、それを止めるんじゃなく、それをどう着ていくのか、どういうものを使っていくのか考えてご提案できたらなと思っているところで、変わっていく時代に合わせていくことは必要だと思っていて、
「繕う」という点については、コロナであったりとか、もう世の中行くとこまで行ってしまっていて、あとは交代するものが何か出てくると思って、普遍的なものがクローズアップされて改めて見直されて大事になっていくのではないかと。
ーそうですね、暮らし方とかも行き着くところまで行き着いているように思います。あとは今、おうちにいる時間が増えて、その分何かを手入れしたりだとか、編み物を始めてみたりとか、そういう人が多くなっていると思うので、その一環で「繕う」ということをみんなにやってほしいですね。
今のこの状況は、変わるために必要だったことなのかもしれないですね。まあ、加速した部分もありますけれど、そういった止められない部分にはこちらも合わせて行って、ただその普遍的なところは残っていくと思うので、そこを大事にしていってほしいですね。
ーやはりお客様と会話をしながら、どういう風に靴を磨くか考えられているんですか?
そうですね、どんな付き合い方しているのか、この靴がどういう歩みをこの人と一緒にしてきたのか、だとか。そういったことを大切にしています。
ーちなみに「繕う」ことが、環境に配慮したり、丁寧な消費に繋がることだと思うのですが、今後を担う次世代に伝えたいことはありますか?
そうですね、お客さんでも特に女性は40代以上の方が多いんですよ。
なんでその人たちがそういう意識なのかなって考えたときに、やっぱりそれは伝えられてきたものがきっとあるんでしょうね。親世代だったりとか、おじいちゃんおばあちゃんから伝わってきたものが。
それが、どんどん変わってしまって、なかなか伝えてこられなくなってきて、当たり前と思ってきたものが変わってしまったんだと思います。なので、単純に、ものを大切にしていこうぜ、長く使おうよっていうことですね。せっかくだから、男性であればカッコつけようぜ、もっと素敵になろうよ、って。素敵ってどういうことか掘り下げて考えてほしいですね。
カッコつけ方をおしゃれで終わるんじゃなくて、そのものがどうやってできたのかとか、知ることでモノに対する見方も変わってくると思うので、カッコつけ方まで素敵になってほしいです。
DOEK(ズック)
山形県山形市桜町4-18 BARBERS内
Tel:090-8255-6718
Mail:doek.yamagata@gmail.com
協力:DOEK(ズック)
interviewer:加藤はる
writer:佐藤彩花
photo:平野妙
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