No.5【畳からはじめる、丁寧な暮らし】
昭和62年創業で、畳製造・販売、襖・障子・網戸の張り替えを主とした内装工事、リフォーム工事を行なっている「小西畳工店」。
天然畳などを取扱い、「本物の畳の良さ」を伝えています。
今回は自身も畳の作り手であり、店主の小西さんにお話をお伺いしました。
繕いながら、長く使用できる畳
ー畳を修繕して長く使うことの良さはなんですか?
畳の良さは繕うことができることです。
例えばフローリングとかだと、その部分だけ交換、ということはできないんです。
でも畳だったら、表面(ござ)が傷んだら張り替えることができます。さらに藁床であれば、縫って補修することもできます。正しく繕うことでより強く、自然の状態を修復することができます。
修繕の仕方も様々で、縫って修繕する人もいればホチキスのような物で簡易で止める方や(上に)のせる人もいます。
小西畳工店ではお客様に長くお客様に使ってもらうために、(畳はリバーシブルになっていて、裏も使えるようになっているので、)裏も使用できるような修繕方法を行なっています。
修繕する際はい草を使用することもありますし、あとは藁を使うこともあります。
藁は厚みがあるので、凹みが大きい部分に使用したり、そこまでひどくない場合はい草を使用したり…ケースバイケースで行なっています。
ー畳を長く使うために私たちの普段のお手入れはどんなことが出来ますか?
天気の良い日は窓を開け、換気をすること。(畳は空気中の湿度を吸放湿するので)
これはフローリングとかでも一緒で、家の中閉めっぱなしにして、空気がこもって湿気が溜まっていると、どんどん朽ちていってしまうので、畳にかかわらず家が悪くなってしまいます。
箒や掃除機等で掃除をする
今年は梅雨が長かったじゃないですか。それでカビが生えてしまったという人もいるのですが、まめに掃除をして換気をして風を送ってあげるとカビも生えづらいです。
畳の目に沿って乾拭きする
畳の目に沿って乾拭きすると、ツヤツヤになります。
これで畳のお手入れはおおよそOK!
そして定期的に畳替えすることが重要です(畳や畳下の湿度の具合を確認するため)畳を張り替えることは家の状態、暮らし方のチェック、いわば健康診断と同じ役割なんです。
古くから続く、伝統の藁畳の良さ
ー様々な種類の畳がある中で、特に長持ちする畳はありますか?
本質的な部分と歴史から考慮すると、厚みのある「藁の畳床」(畳の仕上がりが54mm〜60mm)です。
最近の住宅メーカー等では厚さ15mm前後の畳が採用されていることもあります。こちらは耐久性の問題から使い捨てになることも多いです。畳を張り替えるたびに新畳にしなければいけないことを避けるため、家選びの際に畳の厚さは何センチですか?と聞くこともおすすめです。畳の厚さが54mmから60mmほどあると良いですよ。
ーやはり昔ながらの「藁」が良いんですね。
昨日、尾花沢まで行って来たんです。その畳(以下写真)が畳床は今機械で縫われているんですけど、昔って全部手で針を上げ下げして縫っているんですが、その畳が手縫いで何年前だと思います?表面は綺麗ですよね。
(裏をひっくり返すと…)なんと大正11年!
これでもまだまだ使えると思うんだけど、たまたま処分になっちゃったみたいで。
やはりこのような「藁の畳床」が一番長持ちはします。歴史から見ても、こんなふうに98年たっても繕って、修繕して、上手く使えばまだまだ使えるんです。
ーすごい…100年くらいは持ちそうですね!
薄いと耐久性がなくなってしまって、これは使い捨てになることがほとんどなんです。
これはコシがなくなってしまい、「ござ」がはれないので使い捨てになって、これから先のサステナブルな世の中とは真逆なことになってしまいます。
なんで畳の土台が藁なんだろう?と思った時があって、それをたまたま聞いたら「やっぱり米が取れたからなんじゃない?」と。米を取ってそれを何に使うかといったら、米がたくさん取れるからこそ、こういった(畳の)土台にして繕う、という考えに至ったのではないか、という話で。
(畳は)ある意味循環型で、なおかつ自然のものなんです。
ー修理や張替えをする目安の時期はありますか?
5年〜10年が替え時です。ただ、使い方によってそれぞれなところはあります。あんまりボロボロになってしまうと裏が使えなくなってしまうんです。畳は表裏一体のような感じで、い草が交互に編まれているので、上が擦り切れすぎると、裏返した時に、ぼろぼろと取れてしまうんです。
なので、足にい草が付いてきたな、というくらいで替えてもらえるのが、一番裏が綺麗な状態で、長く使えますね。
畳から始める、丁寧な暮らし方
ー畳があることで、どのように暮らしが変わりますか?
畳は「稲わら」「い草」と田んぼからなる自然素材を使用しています。
い草は日本国産に限って言えば、90%以上が熊本で作られています。熊本県のミネラル豊富な球磨川の水、燦々と降り注ぐ太陽、澄んだ空気と農家さんの愛情で育つい草です。稲わら床は、宮城県が全国生産出荷数1位なんです。大地の恵みが生んだ素材からなる畳は、心を静め、癒しをくれます。ゴロンと寝転ぶ瞬間も最高です。
例えば掃除を怠り、窓も閉めっぱなし、至るところに埃が溜まり住環境が良くない状況にあると、畳にカビが生えることがあります。これは住環境の危険サインです。家の綺麗さの目安として畳にカビを発生させない=まめに掃除をすることです。これが家を大切にすることになり、丁寧な暮らしにも繋がります。
また、畳は子供や高齢者の転倒時の怪我をしにくいという利点もあります。現代の住宅は洋風化に伴い、フローリングが多くなっています。見栄えも良く、メンテナンスが非常に楽。その反面、表面は固く、冬は冷たく、夏はべたつきます。高齢者が転倒し、骨折をする割合は、畳よりフローリングの方が非常に高いです。弾力性のある稲わら畳は私たちを優しく包み込んでくれます。
繕うことから考える、これからのこと。
ー「繕う」ということが今より広まることで、10年後はどう変わると思いますか?
使い捨ての物が少なくなると思います。繕うことができるのか、そうでは無いのかという繕うことを前提とした選択で本質の部分から物を選ぶ。このことで、不要な廃棄が減り、廃棄〜焼却時に出る二酸化炭素を減少させることができると思います。
また、物や事に対する愛着を深め、大切に使い続ける想いを、またその先の10年後へ繋ぐ事ができるのではないかと思います。作り手はお客様に長く使ってもらえる物を作る事が大切だと思います。
つくる責任、つかう責任を想う、10年後になることを願います。
ー次世代の消費者に伝えたいことがあれば、教えてください。
見た目の良さも大事ですが、その物は修理、修復、修繕は可能なのか?物の本質を見抜く力を養ってほしいと思います。簡単に廃棄される物よりも、大切に使い次世代に繋ぐ事のできる物の方がより価値が高いのではないでしょうか。
小西畳工店
宮城県仙台市泉区天神沢1丁目16-51
TEL:022-773-5956
FAX:022-773-5957
HP:https://konishi-tatami.jp/
Instagram:@konishi_tatamikouten
協力:小西畳工店
interviewer / writer:加藤はる
photo:浅野美海
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