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今のヴェルディには先制点が必要。それが体現できた試合。〈水戸戦レビュー〉

試合情報

J2リーグ第29節 水戸ホーリーホックvs東京ヴェルディ
@K'sデンキスタジアム水戸 18:00KO
前半0-2/後半1-0 合計1-2
〈得点者〉
【水戸】
福満(53分)
【東京V】
森田(19分)、小池(20分)
〈交代〉
【水戸】
61分:白井→平野
74分:黒川→村田
77分:浅野→レレウ
【東京V】
51分:河野→端戸
70分:小池→若狭
76分:クレビーニョ→澤井

スターティングメンバーと基本フォーメーションはこちら↓

5戦ぶり勝利から感じる成長

4戦勝ち無しから迎えるは水戸ホーリーホック。少しずつ順位は落としているものの堅実な4-4-2で猛威を振るうチームである。
ヴェルディは新加入のクレビーニョが初出場初先発。永井監督が獲得を熱望した選手のポテンシャルは如何にというところで注目されていた。これにより小池を2トップの一角で起用することができるようになり、攻撃力にも拍車がかかるのではとも考えられた。
水戸は木村に代わって浅野が先発出場。前半戦に苦しめられた彼をどのようにおさえるのかも見どころである。
それではいつも通り攻撃と守備の2局面に分けて振り返りたいと思う。

攻撃

ヴェルディの基本的なビルドアップパターンに触れていきたいと思う。

サイドからのビルドアップに関してはまず1つ目の水戸SHがSBに対してプレスしてきた際に空くスペースを利用するものだ。そのスペースにIHの選手が流れてきてそこにパス。IHがもともと居た場所にスペースができるので、そこにSBが入っていきボールを受ける形だ。特にこれが上手くできていたのはクレビーニョである。上図のような連携をみせて幾度も前進できていた。そのまま河野ともう一度ワンツーをして相手最終ラインの裏まで行けるシーンもあった。クレビーニョはオフザボールのシーンでもインサイドをとりセカンドボールを回収するなどネガトラの場面でも良さを見せており、非常に期待感のあるプレーを見せてくれた。
そして左サイドによく見られた2つ目のビルドアップのパターンとしてはSBがボールを持ったタイミングで純輝が水戸SBを引き連れて下り、その裏のスペースにIHが流れてボールを前進させるものである。このパターンはそこまで多くは出来ていなかったが、相手に守備基準を多く作っているヴェルディの攻撃時陣形が上手くハマった形だったと考えられる。
水戸の4-4-2でのプレスのミスマッチがかなり顕著に表れたのはレアンドロが水戸2CH間に下りてボールを受けるパターンである。今回の図には組み込んでいないがこのパターンも多く出てきた上に、しっかりと前進できていた。
このように、相手のプレッシングとのミスマッチを上手く生かし前進を実現できていた前半の30分ごろまでは主導権を握って試合を運べていた。

そして前進した先では2つのパターンを見ることができた。

1つ目のパターンは偽WGのパターン。上図だと純輝がインサイド、森田が下りて、奈良輪がオーバーラップする形である。この形は両サイドで見ることができた。このトライアングルの連携により大外が空き、そこをしっかり使えているシーンもあった。この動きに関しては鹿児島戦の右サイドでも見られたが、練度が上がっていてなおかつ奈良輪までボールを預けることもできていた。
2つ目のパターンはWGが中に入らずSBのインナーラップするパターン。これに関しても両サイドで見れた形である。奈良輪もクレビーニョもタイミングの違和感なくインナーラップできていた。またこの形で深い位置まで行けていたので練度の高まりを見せてくれた形である。
この2つに関しては相手のサイド2枚をどのように守備基準点をずらしスペースを作り出すかにフォーカスされていると感じる。永井監督就任から少し時間がたった今、成長を感じる部分でもある。

そんな中でも課題ではないかと感じたシーンを切り取ったのが下図である。

このシーンは26:55のシーンである。2CB以外の選手が攻撃時に押し込みすぎてしまいライン間に絶対にカバーできない広大なスペースを生んでしまった。これに関してはアンカーの理仁だけが悪いとは言えないだろう。全体としてバランスを取るために森田がアンカーの位置に入ることもあった。つまり選手が入れ替わろうとも2-3-5という形は崩れないのが今のヴェルディの戦い方である。もちろん先ほど紹介した前進した後のトライアングルの旋回と考えは一緒である。
しかしこのシーンは誰も周りに対して気を使うことができず、被カウンターの場面になりピンチを招いた。この辺りのリスクを必要経費と考えるべきなのか、リスク管理をしなければいけないシーンなのかは監督の考え次第ではあるが、このようなシーンに関する言及はそんなに見当たらないので必要経費なのかなとは思うが、もう少し改善されてしかるべきなのかなと感じる。

そして水戸が30:00辺りから5-4-1での守備を開始する。

水戸は浅野を河野のマークに下げさせて5-4-1ブロックを敷く。まずこの変更での効果の1つ目はヴェルディの5トップに対して5バックを敷き守備の基準点をハッキリさせるというメリット。2つ目は4バック時のようにヴェルディアンカーの理仁にプレスに行ってもCHが1枚余ることである。これにより小川の前プレからパスコースを制限していきヴェルディのビルドアップを阻害することができていた。ここからは対人の強度で水戸に上回られてボールロストがかさんでいきボールを保持する時間が次第に減っていってしまった。

そして後半若狭投入後からはヴェルディも3-4-2-1へ変更。しかしこの形にしても、効果的にこちらから相手を動かすことがなかなかできず、水戸5-4-1変更後と特に攻撃面では変化がなかった。

しかし何度か前進できたシーンは下りてくる選手のフリックで相手のライン間に前進できた時があった。しかしこれも前提とする動きが下りてくる動きなので最終ラインの裏まで運び出せるシーンがもう少し増えていくと5-4-1の相手に対しても決定機を作り出すことができるのではないだろうか。

前半の30分ごろ(水戸の守備時フォーメーション変更前)までは今までよりさらに練度の高い動きを見せ、成長を感じられた。クレビーニョも良い動きを見せており、次節からも確実に試合に絡んでくるだろう。ただやはり前からアグレッシブにくる5バックに対する前進の仕方の整理は確実に必要だろう。

守備

水戸はCHが少し縦関係気味になりながら地上戦でのビルドアップがメインだった。

ヴェルディは前節から採用している4-4-2でのディフェンスを敢行。水戸CHは縦の動きしかしないためヴェルディの選手は守備の基準点がハッキリしており、前進を阻害する動きが見られた。前半の途中まではこの守備をできていたので守備に関しても主導権を握ることができていた。

しかしロングボールを水戸が増やし始めた時間帯からボールを水戸が支配しはじめる。見ての通り、2CHvs2CHの構図がある以上水戸の2CHが位置を下げるとヴェルディの2CHの位置だけが上がってしまい、ライン間が空いてしまいセカンドボールを水戸の選手に拾われて攻撃されるシーンもあった。これが偶発性が絡みながらも実ってしまったのが唯一の失点シーンである。あのシーンも理仁と森田が前に引っ張られ、ライン間が空きそこに浅野が侵入し、そこから失点してしまった。これは基準点がハッキリしているからこそのエラーなので、このエラーを上手く使えたのは水戸ということだろう。ヴェルディはこのエラーを突き切ることはできなかった。

しかしそれを嫌った水戸は前半戦で敢行していたチャンネル落ちを実行し始めた。ここからはどこまでヴェルディのCHが水戸のCHについていくのか、中盤スペースをどこまで空けることを許容するのかの判断が甘くなってしまいフリーで持たれる時間が増え始める。ここからボールの主導権は水戸に移りはじめる。

上図のようにチャンネル落ちに対応することはできないのに、ボールは左サイドにあるためヴェルディはコンパクトさを保つためにサイドに寄らざるを得ない状況になってしまった。そのことによりサイドチェンジを乱発され容易に前進を許してしまっていた。しかもサイドチェンジの後にその選手への距離感が悪いため、中途半端にスライドしもう一度サイドチェンジされる場面から深い位置まで前進されるなど、ファーストディフェンスがハッキリしないことで水戸がスペースを使うたびにヴェルディのエラーが連続してしまう状況が生まれてしまった。やはり4-4-2でコンパクトな陣形を保って守備をする以上はもっとオーガナイズされるべきだと考える。ただ守備に割いている時間が少ないのであれば、しばらくは我慢しながら見ていかなければならないのかなと感じている。

そして後半はヴェルディが5-4-1へ変更。水戸はビルドアップを3-2-5に変更。それが下図である。

ここからは水戸のサイドチェンジがキャンセルされてしまうためなかなか深い位置に侵入できなくなっていく。アーリークロスからのチャンスを狙う。しかしゴールまでこぎつけることができずに1-2でタイムアップとなった。

レアンドロのサイド起用について

ここで読者の方からリクエストのあったレアンドロの左サイド起用に関して少し触れておこうと思う。今節は少しの時間下図の形の時間があった。

僕がこの時間帯をみて考えたのはそんなに位置が変わってもタスクは変わらないんじゃないかなということである。山形戦でもあったがその時は押し込んでいたのでかなりWG的なタスクもやっていたが、今節に関してはビルドアップが多かったからかフリーマンタスクに変化はなかったかなと思う。他の選手がレアンドロの空けたスペースを補完し形を崩さないようにはしていたので、攻撃的タスクというよりはボール保持のための配置なのかなと感じた。そののちに端戸とレアンドロの位置が変わっていたので、この2人に関してはそこまで変わらない扱いなのかなと。ただ差を感じるところは守備の貢献度である。つまり守備を前からしたい場合に関しては端戸を前においてもいいし、しっかりブロック形成したい際にはレアンドロのトップ起用なのかなと感じる。両選手の特徴とその時の試合状況に左右されるのかもと最終的には筆者は考える。しかし判断するにはサンプルが少なすぎるので何度か見れたらまた考察していきたいと思う。

まとめ

4600文字越えのレビューとなったがいかがだっただろうか。この試合は戦術的駆け引きの多いかなり面白い試合となり、見ごたえがあったのではないのだろうか。(このレビューの図が計10枚になったのもうなずける笑)
個人的にはタイトルにあるように今のヴェルディには先制点が必要であると考えている。それはもちろんヴェルディがマンCのように90分間圧倒できるクオリティーがないことや、5バックにするだけで前進できなくなり容易に抑えられるのがある。またシンプルにフィジカル的に90分持たないこともある。これらの条件より攻め込むことができている前半の序盤にしっかり点を取れるだけ取ることで勝利に近づいていくことができるだろう。
次節は長崎。豪雨の影響がかなり心配ではあるが、しっかりと絶好調の呉屋を抑え込み、勝ち点3をもぎ取って帰ってきてほしい。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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