あの日消えてしまった命
拝啓
愛する2人の息子達へ。
この手紙は、パパが幼い君たちと過ごした記憶を忘れないために、君たちが大人になった時に、自分たちの幼い頃を思い出すきっかけになればと思い書いています。
そして、将来君たちがパパになった時、自分達の子供とどう向き合うべきか悩んだ時、何かの役に立てたら嬉しく思います。
悲しい事に、人の記憶は永遠ではなく、次第に色褪せて、消えていってしまうものだから。
パパ自身だって、小さい頃の父ちゃんや、母ちゃんや、兄ちゃんや、友達との記憶は少ししか残ってない。なんか寂しいよね。
でも、忘れる事って必要なんだって。
人は覚えていられる記憶の量が決まっていて、古い記憶や大事じゃない事から忘れる。そうしないと、生きる為に必要な事、すっごく嬉しかった事や悲しかった事、大事なお勉強なんかもそうだね、そういう大切な事をしまっておけなくなっちゃうんだって。
今日はこれから、とても大切なお話をするね。
忘れちゃいけない事だから、しっかり覚えておいてね。
9年前の今日、2011年3月11日は
日本中が、悲しい気持ちになった日なんだ。
東日本大震災。
大きな地震と、大きな津波。
たくさんの人が、亡くなっちゃったんだ。
本当にたくさんの人が。
パパや、ママがいなくなっちゃった子供達。
大事に大事に育てたかわいい子供を亡くしたパパやママも。
兄弟や、おじいちゃんおばあちゃん、お友達、、
先生や、近所のおじちゃんおばちゃん。
みんな、昨日までは生きてたんだ。
朝、笑顔で行ってらっしゃい言ったんだ。
元気に、行ってきます言ったんだ。
夕方、いつも通りにおかえりなさいするはずだったのに。
ただいまって、帰るはずだったのに。
みんな、みんな、いなくなっちゃった。
人にはいのちというものがあって、あした、みんながいのちを持っているとは決まってなくって、
なくなっちゃったらみんなとバイバイしなきゃいけないんだ。すごく寂しいことだよね。
だから、自分のいのちを大事にしてね。
生きることの大切さを教えてくれた、
あの日消えてしまった、たくさんのいのちのためにも。
9年前のあの日、悠真はまだママのお腹にいたね。
パパがもし、津波で死んじゃってたら悠真や葵に会えなかったんだね。
あらためて、君たちに会えてよかったです。
生まれてきてくれてありがとう。
2020.3.11 パパより。
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