いま注目の国内アートホテル12選【西日本編】
こんにちは、HARTiの田邉英也です!
今回は第四弾として、第三弾に引き続きホテルへのアートの活用事例について紹介したいと思います。
前回は、東日本にあるのアートを活用したホテル10選を紹介しましたのでまだの方はぜひ読んでみてください。
はじめに
これまでアートを活用したホテルを2回の記事にわたって紹介してきました。
記事の中ではアートをホテルに導入する理由として、他社との差別化やアーティスト支援、地域活性化、コンセプトの表現などを紹介しています。
アートの導入は他ホテルとの差別化になり、現代の若者の目を引くことにもアートは貢献しています。
ただ、今回紹介させていただいている事例を調べる中で、アート作品を配置して集客効果を期待するのではなく、宿泊者に他のホテルとは違った非日常感を感じて貰えるという利点があると新たに考えました。
「非日常感」は人間の欲求として数えてよいと思います。
毎日決まった時間に起き、出勤、労働、退社、就寝、そしてまた起床という単調なサイクルを過ごす中で、少しくらいは日常とは異なる場所に身を置きたいと考えるものです。
「いつもと違う自分になれる」ことは心の安定に繋がります。
私自身、旅が非常に好きですが、「なぜ旅をするのか」と問われたら、日常生活と離れて、まだ見ぬ地域に身を置き、「非日常感」を味わうことで、再び「日常」に向かう自分自身の精神や身体をリフレッシュすることが可能だからです。
アートもまた「日常的」に触れていない人が多いからこそ、ふと目にしたアートに目を奪われ、「言葉にできない心地よい感覚」を感じて浄化されることもあります。
その心を奪われる非日常的感覚を通して、心身を癒して欲しい、そして「日常」に還る人々を応援したい。そういった気概を、以下で述べるホテルの運営者は持っているのではないかと解釈しています。
いずれにしても、以下で述べる事例は、そうしたアートの持つ「非日常性」という潜在能力を理解し、何よりその力を信じているからこそ導入・実践されていものと私は捉えています。
昨今のコロナでアートが「不要不急」と見なされてきました。
国民がみな「必要早急」な生活を送っているからこそ、「非日常性(不要不急)」という体験が要求されているのではないでしょうか。
1. エースホテル(京都)
2020年6月に開業したエースホテル京都は、京都が日本の文化の中心地であるととらえ、「East meets West」をコンセプトに日本を代表する建築家 隈研吾氏と、エースホテルの長年のパートナーCommune Designとのコラボレーションによりデザインされました。
エースホテルは、1999年にアメリカ・シアトルに誕生し、これまでは北米とヨーロッパ9都市でホテル展開しており、今回アジア初進出の地として京都が選ばれたのです。
ホテルのロビーには、カフェやギャラリーなどがあり、どなたでも24時間利用可能となっているので、ホテル宿泊客以外の人も集まる場所となっています。
また、ホテルが新風館内にあるので、映画館やアパレルショップ、カフェなど、さまざまなお店も楽しむことができる場所となっています。
全213室には、97歳の染色工芸家・柚木沙弥郎氏によるアートワークがに設置されていたり、ロビーや中庭にも名和晃平氏らのアート作品が配置されており、アートも楽しむことができるようになっています。
画像引用:https://www.acehotel.com/kyoto/
引用:https://www.acehotel.com/kyoto/
2. BnA Alter Museum(京都)
画像引用:https://bnaaltermuseum.com/
2019年5月に開業されたBnA Alter Museum。同ホテルの運営を行うBnA株式会社は、秋葉原や高円寺、日本橋にもアートホテルを展開しています。
また、宿泊費の一部がアーティストに還元されるシステムを導入しています。
BnA Alter Museum関西を中心に9人のアートディレクターと、ライゾマティクスの真鍋大度氏ら16人のアーティストが31部屋の泊まれるアート作品を制作しています。
BnAはソーシャルベンチャーとして、そしてゴミを出し続ける宿命のホスピタリティ事業者として、どう環境負荷を減らしより持続可能な社会モデルを構築できるかを考え続け、再生可能エネルギーの購入、使い続けたくなるクオリティーのアメニティ、環境負荷の少ないバス用品、紙ストローの廃止等、一過性のコストではなく地球全体でのコストを考えて事業に取り組んでいます。
創業者である田澤氏は大学時代にアメリカ北東部で過ごしており、たくさんのアートを作るパーティーを主催したり、砂漠で開催するアートフェスティバルに参加したりと、学生時代の日常には常にアートがあったそうです。
そこで、人を行動に導くアートの力を感じ、BnAを創業する際に普通にホテルを作っても面白くないと考え、日本での若手のアーティストにはなかなか仕事の機会などが与えられないという現状に対して、若手アーティストにもっと機会を提供できるようにしたいという考えから、アートを取り入れたホテルを作るようになったそうです。
引用:https://bnaaltermuseum.com/
3. ホテル アンテルーム京都(京都)
画像引用:https://www.jalan.net/yad349490/
HOTEL ANTEROOM KYOTOは、学生寮として使用されてきた建物をコンバージョンしオープンした全128室の客室と50室のアパートメントからなるホテル&アパートメントで、「アート」「カルチャー」「和」の三つをテーマに現在進行形の視点で捉え、「京都の今」を発信しています。
併設しているギャラリーでは、京都を拠点に活動するクリエーターを紹介する企画展をはじめ、彫刻家・名和晃平氏がディレクションを務める「SANDWICH」との共同プロジェクトを進めているそうです。
また、パブリックスペースでは定期開催の音楽イベント「ANTE GROUND MUSIC LIVE」やアートやデザイン関連のトークイベントやワークショップを開催していそうです。
客室には、映画監督/写真家・蜷川実花氏や彫刻家・名和晃平氏ら八組のアーティストがデザインしたコンセプトルームがあり、アート好きや各アーティスト好きにはたまらない空間となっています。
また、これらのデザインなどから2017年度グッドデザイン賞も受賞したそうです。
画像引用:https://www.uds-hotels.com/anteroom/kyoto/
引用:https://www.uds-hotels.com/anteroom/kyoto/
4. node hotel(京都)
2019年7月にオープンしたnode hotelは、「アートコレクターの住まい」をコンセプトに、非日常の贅沢ではなく、暮らしの中でアートを身近に感じられるアートコレクターの住まいのようなホテルを、体験する場所として作られています。
ロビーや全25の客室にはアートコレクターの所持している、世界的に評価されている五木田智央氏や加藤泉氏、井田幸昌氏のなどアート作品が飾られていたり、アーティストやギャラリーとコラボレーションした展覧会やポップアップストアなど、アート、デザイン、ファッション、音楽、フードを基軸にした企画や積極的な情報発信を行い、文化や人々の交わる場を目指しているそうです。
また、node hotelは、「アート作品は購入された後倉庫に眠っていることが多いけれど、私達はホテルという公共の場にあえて展示することで、社会的にどんな価値が生まれるのかを見てみたい」というような考えから、アート作品を取り入れたnode hotelが作られたそうです。
5. 河岸ホテル(KAGAN HOTEL) (京都)
画像引用:https://www.instagram.com/kaganhotel/
京都中央市場にある野菜卸の女子寮兼倉庫をリノベーションし、2019年11月に開業された河岸ホテルは、株式会社めいが運営しており、「若手アーティストが住みながら制作活動を行う」をコンセプトに、現代アートの若手芸術家が共同生活を送りながら作品を生み出すことのできる滞在型複合施設であり、アートに関心のある人々が世界中から集まる場所を目標としています。
1Fはイベントスペースとカフェバーとして利用できるFOOD STUDIO、地下1Fはギャラリーと24時間使用可能なアトリエ、2Fは合宿所と撮影スタジオ、3Fは若手芸術家のシェアハウス、4Fは安価で宿泊できるホステル、最上階の5Fは入居する芸術家たちの作品を選び共に過ごすことのできる体験型のアートホテルとなっています。
住みながらスタジオで制作できるだけでなく、若手芸術家が世界中のファンやコレクターと出会い、制作した作品を購入・継続的に見守っていただけるきっかけを提供したり、ホテルで短期スタッフとして働く場所を提供したりして若手アーティストの支援を行なっているホテルです。
6. ホテルロイヤルクラシック大阪(大阪)
画像引用:https://hotel-royalclassic.jp/
2019年12月、大阪新歌舞伎座の跡地に世界的建築家・隈研吾氏によりホテルロイヤルクラシック大阪が誕生した。
同ホテルは、「ミュージアムホテル」をコンセプトに、画廊とのつながりなどから、館内にはロビーやエレベーターホール、客室、廊下といったさまざまな場所に100点以上のアート作品が展示されています。
作品の中でもとくに重要なのが「具体美術協会」の作品です。具体美術協会は1954年、吉原治良を中心に兵庫県芦屋市で結成された芸術家集団で、72年に解散しましたが、その後もさまざまな美術館で展示されるなど、アート市場でも高い評価がつけられています。
同ホテルでは吉原の作品はもちろんのこと、白髪一雄、田中敦子、上前智祐、嶋本昭三、元永定正ら代表的な作家たちの作品を随所で見ることができます。
また、他にも草間彌生氏や村上隆氏などの著名アーティスト作品も展示されており、アート作品は定期的に入替えを予定され、再訪いただいた際にも新たな作品を楽し無ことができるようになっているそうです。
これまで日本に作られたアートホテルとは規模が違い、本当に美術館にいるような空間を楽しむことができます。
画像引用:https://intojapanwaraku.com/travel/56405/
引用:https://hotel-royalclassic.jp/
7. THE TOWER HOTEL NAGOYA(愛知)
画像引用:https://thetowerhotel.jp/
2020年10月に名古屋テレビ塔がリニューアルオープンされて誕生したTHE TOWER HOTEL NAGOYA。同ホテルは「ローカライジング」をコンセプトに、東海三県(愛知・岐阜・三重)で育まれた伝統文化、アート、クラフト、食材などを国内外に発信する場所となっています。
15室のみとなる客室には、絵画や写真、映像、テキスタイルなど、 一室ごとに異なる、地元のアーティストによる作品たちが飾られています。 また、レストランでは東海が誇る窯元の器をキャンバスに、 地産地消の食材で鮮やかに描かれたフレンチを堪能していただけます。 美食の余韻を味わいながら、贅沢な一夜を過ごすことができます。ここで出会う、触れる、すべてのものが五感を刺激し、日常を忘れさせてくれるような場所となっています。
THE TOWER HOTEL NAGOYAは、世界的なホテルブランド「SMALL LUXURY HOTELS OF THE WORLD」にも加盟し、当初は5対5の割合でインバウンドと日本のゲストを想定していたそうです。また、アートホテルということで、ライフスタイル感度が高い人々がターゲット層だったそうです。
しかし、オープンしたのは新型コロナウイルスの影響でインバウンドが見込めないときです。そんな中、Go Toトラベル事業の効果もあり、予想もしていなかった年配で地元の愛知県民が多く宿泊利用したそうです。
8. KUMU金沢 by THE SHARE HOTELS(石川)
画像引用:https://www.thesharehotels.com/kumu/
2017年8月に株式会社リビタが、築44年のオフィスビルを用途変更を伴うリノベーションを行い「KUMU 金沢-THE SHARE HOTELS」が誕生した。
同ホテルは、「金沢の文化を汲む場所」をコンセプトに、このホテルを通して金沢の伝統文化をアップデートし、金沢の魅力を国内外へ発信していくことを目指しています。
禅や茶の湯といった武家文化が色濃く残るまち金沢で活躍する気鋭の地域プレイヤーが集い、金沢の伝統文化を未来につなぐ文化サロンとなることを目指しています。まちに開かれたシェアスペースでは、工芸作家や茶人、僧侶、アーティスト等とともに金沢の伝統文化にちなんだ多様なコンテンツを現代的な目線で展開しているそうです。
アート・工芸を扱う文化事業会社ノエチカ高山健太郎氏の監修のもと、金沢の伝統文化を汲み取ったアート・工芸作品を選定・制作しキュレ―ションしており、共用部や一部客室など様々な場所に計13点の作品を設置し、アートを通じて、ホテルを訪れるゲストに金沢の奥深さと出会うきっかけを提供しています。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000074.000008644.html
9. タラサ志摩ホテル&リゾート(三重)
画像引用:https://taoya-shima.ooedoonsen.jp/
タラサ志摩ホテル&リゾートは三重県の海岸前に位置しています。
草間彌生作「南瓜」をはじめ、館内には村上隆、奈良美智、白髪一雄、アンディ・ウォーホルなどの貴重な作品が約40点展示されています。
好きな作品を見つけたり、青い海と空をバックにした作品の前で記念撮影をしたりして、普段触れることのないアートを存分に楽しみ、感じることができます。
画像引用:https://www.jalan.net/news/article/233042/3/
引用:https://taoya-shima.ooedoonsen.jp/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000018993.html
10. ベネッセアートサイト直島(香川)
画像引用:https://www.benesse-artsite.jp/
ベネッセアートサイト直島の活動は、1989年にオープンした直島国際キャンプ場から始まり、「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに、美術館とホテルが一体となった施設として1992年に開館したベネッセハウス。「ミュージアム」「オーバル」「パーク」「ビーチ」の宿泊棟4棟と、一般の方もご利用いただけるレストランやカフェ、スパ・ショップを併設しています。
建築はすべて安藤忠雄氏の設計によるもので、経年とともに瀬戸内海国立公園の環境と溶け込むように構成しているそうです。
長いスロープや階段、通路による移動、切り取られた開口部から注ぎ込む外光など、施設内外の現代アートを身体全体で感じられる工夫がされています。
直島にはすばらしいアート作品が数多くありますが、アートが主役ではなく、島やそこで暮らす人々が主役であり、アートは島の魅力を引き出すものと言われています。
直島から始まり、現在では瀬戸内海の数々の島々にアート作品が配置されており、三年に一度瀬戸内国際芸術祭が開催され、年々島々を訪れる人が増えています。
引用:https://www.benesse-artsite.jp/
11. GALLERIA MIDOBARU(大分)
画像引用:https://beppu-galleria-midobaru.jp/
2020年12月、株式会社関屋リゾートが大分県別府市に「体験価値を高めるサイトスペシフィックなホテル」をコンセプトに、温泉、食、空間、アートを贅沢に楽しめるホテル「GALLERIA MIDOBARU」をオープンした。
同ホテルが提供するのは、知らなかった自分、世界が違って見えるまなざし、アーティストとの視点交換のような感覚に出会える、まったく新しい宿泊体験です。一流アーティストによって仕込まれた空間操作は、徐々に身体へと溶け込み、この土地に息づく仄かな気配をより敏感に感じさせてくれます。
ロビーや廊下、客室などの設内各所には、各アーティストがこのホテルのために「別府」からインスピレーションを得て制作した作品が設置されており、彫刻や写真、絵画、インスタレーションなど、さまざまな種類のアート作品があります。
引用:https://beppu-galleria-midobaru.jp/
12. ホテル アンテルーム 那覇(沖縄)
画像引用:https://www.uds-net.co.jp/
2020年2月に沖縄UDS株式会社が「ホテル アンテルーム 那覇」を開業しており、国内外で活躍するアーティストが客室を手がけたコンセプトルームも複数設けているそうです。
また、名和晃平氏や鬼頭健吾氏など、総勢30名以上のアーティストの作品が展示がギャラリーのみならず、エントランスやレストラン、客室など、さまざまな場所にアート作品が展示されています。
2011年に京都で誕生したホテル アンテルームは、ホテル全体にアートを配し、地域のコミュニティと交流をはかるイベントを開催するなど、まちの「今」を表現するアート&カルチャーが集まることで新たな賑わいを創出してきました。「ホテル アンテルーム 那覇」でも、アートやカルチャーを介して人が集い、つながることで那覇に新しいシーンを創出するホテルを目指しています。
客室やパブリックエリアには、宮古島出身の若手アーティスト八木恵梨氏が沖縄を散策しながら収集したイメージを描いた水彩画の他、沖縄、京都、東京などで活躍する新進の若手作家たちの作品を設置しています。
那覇のこの場所の特殊性を生かしてホテルをやるとすれば、アートホテルだと思い、アートを取り入れたホテルを作ったそうです。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000038554.html
https://okinawa-uds.co.jp/hotels/anteroom-naha/
https://sitateru.com/case/anteroom-naha/
文責:田邉英也