なぜ、『鍼灸師』はつらいのか?
どうも豪華客船鍼灸師のリョウタです。
今はギリシャのカタコロンという小さな港町にいます。
僕は22の時に鍼灸師になりました。
まぁ22っていったらまだ社会のこともわからないし、社会人経験がないので
『ホンマに鍼灸師になって良かったんかなぁ…。』
っていう疑問というか、モヤモヤは国家資格を取ってから3年くらいは持っていました。
これはネガティブな風に聞こえるかもしれないですが、会社勤めしてる友達とかを見てて、他の世界もちょっと見て見たいなあといった好奇心からくるものでした。
先日こういったツイートをしました。
“鍼灸師になりたての頃はそこそこクズだった。でも職場に行くと患者さんから先生先生と言われ、私生活でクズな自分と、仕事で先生と呼ばれる自分のギャップがしんどかった。だから私生活でも先生と呼ばれて恥じない行動、言動を心がけるようにしてたら、いつからか割とまともな人になれた様な気がする“
クズと言っても別に法に触れるような悪いことをしてたとか、そういう訳じゃなくて、単に人への共感力が異常に低かったり、自己中心的な考えが強かったりしたくらいです。
僕は鍼灸師という仕事が今の自分の人格を形成したといって良いくらい、昔に比べてそこそこまともな人間になれたんじゃないかなぁ、と思っています。
そこで今回は鍼灸師として12年目の僕が、鍼灸師になりたての人、これからなろうか悩んでいる人、なったけどもモヤモヤしている人に対して、鍼灸師という仕事について思っていることを、記事に書こうと思います。
なぜ、『鍼灸師』はつらいのか?
僕自身、鍼灸師になった後もキャリアを模索して、鍼灸師の将来、年収等についてインターネットで調べてみても暗い話ばっかり。唯一良い情報を発信しているのは鍼灸の専門学校くらいで、バカな自分でもさすがに
『鍼灸の専門学校からしたら、将来鍼灸師になりたいと思ってる人は潜在的なお客さんなんやから、そら悪いこと書かへんわなあ。』
とか思ってました。ひねくれてて良かったです。
まず鍼灸師という仕事について、いつも話題になるのが収入です。
Google検索でも『鍼灸師』の後に続くのは “稼げない” “食えない” といったネガティブなワードが多いです。
それでいて年収1,000万円を超えるようなバリバリ稼ぐ鍼灸師がいるのも事実です。
今格差社会が声高に叫ばれていますが、鍼灸の場合はそれが顕著で、開業してうまくやっている先生や、大学教授、プロスポーツ選手の個人トレーナーの方達はおそらく順調でしょう。
でもそんな人たちはほんの一握りで、大多数の人が雇われで働いています。
僕も色々調べて路頭に迷っていた時期に
『同じ資格を取るならひよこ鑑定士の方が良かったのでは…』
と思ったこともありました。
でも開業して一発当てなくても、スポーツトレーナーとして世界を飛び回らなくても、鍼灸師になるメリットは普通にたくさんあるように思えます。
触れるという行為
僕たちは当たり前ですが患者さんに触れなければ、仕事ができませんし、触れることの鋭敏性を鍛えていくことが、この仕事といっても良いくらい大切なことです。
この人の体に触れることが法的に許されているということが、すでに圧倒的メリットです。触れるという行為が体にもたらす影響は計り知れません。
ハグがストレス軽減に効果があることは科学的にも証明されています。中にはストレスを三分の一にまで減少させたという驚きの結果まであります。
僕ら日本人はハグやボディタッチをする習慣が無いので、恋人がいなくて普通に会社勤めしてるサラリーマンだとすれば、母ちゃんに触れるくらいしか、人との触れ合いが無い日常を過ごす事になります。
仕事の患者さんはお年寄り中心だけれど、勤務先や時間帯によっては老若男女色んな人の体に触れる機会があります。
当たり前に毎日やってる『触れる』という行為が人格形成に与える影響は大きく、僕自身、毎日患者さんに触れることによって、ストレスが軽減され性格が丸くなったと思います。
残業とかあまり無い
これは勤め先にもよるかもしれませんが、周りのIT系の仕事をしてる友人や、会社勤めされてる患者さんの話を聞く限り、僕らの仕事はあまり残業とか少ない方なんじゃないかなーと思います。
遅くても9時くらいには帰れて、自分の時間を持つことができる。
拘束時間の長い職場でも、だいたい昼休みが3時間ほどあります。
1日に12時間とか働かされることが少ないのです。
これは医療職にしか就いたことのない人にとっては盲点となっている、意外に凄いことです。
面と向かってありがとうと言ってもらえる
先にツイッターであげたように、全然社会人経験のない僕らも白衣を着て、患者さんの前に立てば、それはもう先生です。
昔、訪問で治療をしている時こんなことがありました。
すごく優しいニコニコしたおばあちゃんの家を訪問し、いつものように治療していると、そこへヘルパーさんがやってきました。
どうやら僕と同じくらいの年齢の男の子。当時20代前半。
いつもニコニコしてて、僕にはまったく厳しいところをみせなかったそのおばあちゃんが急に声を荒だて、そのヘルパーさんに凄い剣幕で指示を送り始めました。
その時の口調は僕に向けて発せられるものとは全く違っていました。
実際僕もケアマネとして実務にあたった時に感じましたが、『治療』という手段を使わず、触れることなく患者さんや利用者さんと信頼関係を構築していくのはとても難易度が高いです。
僕らは当たり前に毎日患者さんに触れているので見失いがちですが、なんだかんだ言って鍼灸師は患者さんからいくらか尊敬されています。
そうやって頼られて、勉強して、ありがとうと言ってもらえる。
このサイクルは鍼灸師をやってて良かったなーと思える、一番のモチベーションでそこは収入とかで測れない側面なのかな。と思います。
最後に
他に目移りしたら結局のところ、資格に執着しないで他のことやってみるのが一番かなと思います。
僕自身26の時に鍼灸から離れ、2年ほど医療法人のホスピスの事務長をしていました。
元々、医療法人の経営する鍼灸院の院長をやっていたのですが、院長に抜擢してもらい、色々悩みましたが受けることにしました。
具体的には看護師、介護士さんの面接や、お給料を計算したり、利用者さんの家族に料金の説明をしたり、全然鍼灸と関係ないことをやっていましたが、今結局鍼灸に戻っています。
そうやって遠回りしても、その経験すら全て臨床に活きる。これも鍼灸師の魅力の一つです。
今は逆に鍼灸師になってなかったらどんな人生やったんやろうか。
と思うことがあります。
会社員やってたら毎日満員電車に乗って揺られることを享受できる大人になっていたのかなー。
とか考えたりします。
繰り返しですが、僕は鍼灸師という仕事によって先生と『頼られたり』、いろんな人に『触れたこと』が今の自分の人格を形成したと思っているので、毎日パソコン相手にカタカタやってたら、ただでさえ卑屈な性格がねじ曲がってしまっていたんじゃないかと思うと恐ろしい限りです。
個人的には鍼灸師になって良かったです。(パソコン業務している人にもまともな人はたくさんいます)
今僕がこうやって豪華客船に乗って、世界を色々旅をしながら働けるのは会社員でも、柔道整復師でも、理学療法士でも、ひよこ鑑定士でもなく、『鍼灸師』だからです。
特に若くして鍼灸師になった人は色々悩んだりすると思いますが、一度立ち止まって足下を見るため海外旅行に出かけたり、または思い切って一度業界から離れてみるのも良いかもしれませんよ。
では今日はこの辺で
Von voyage!
まとめ
・鍼灸師は収入等で語れない『触れる』や『ありがとう』がもたらす大きなメリットがある
・鍼灸師以外の仕事が気になったら、思い切ってやってみる。人生は一度きり
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