Fランク大学は必要か
このところ、SNS上のやり取りで「Fランク」に規定される大学の存在価値はないと決めつけ、廃止すべきだという議論が喧しい。はたして、そうすべきなのか。
結論から言うと、Fランク大学は必要である。なぜなら、地域産業の担い手の育成と地場産業の継承に「人財」が不可欠だからだ。
かく言う私もそれまでFランク大学などの低レベルの教育機関は不要だと考えていた。人口減少と経済縮小という現実から目を逸らすことができないからだ。国の財政破綻を加速させるくらいなら、低劣な教育機関を残存しても意味がない。そこで学んだ若手の人達は企業から見向きもされない。不幸なことだ。大学の数は多すぎる。数十校にまで削減し、浮いた資金を子育てや教育費の支援金として適用すればよいと思っていた。
しかし、私は考えを改めることにした。理由はある本を読んだからである。保守業界で長らく身を置いた「対話型穏健保守」として知られる作家の古谷経衡氏とロシア外交に尽力を注いできた元外交官で作家の佐藤優氏の『日本人の7割が知らない 世界のミカタ』(時事通信社)を読むと、二人の対話から重要な示唆を提供している。
佐藤氏は国立大学法人の値上げ問題とFランク大学の経営課題について古谷氏からの質問に答えつつ、自身の考えを述べている。
このやり取りは非常に重要な視点だと感じた。「Fランク大学」と呼ばれる教育機関は存続すべきであるものの、教育内容を抜本的に変えなくてはならないのだろう。これまでの教育の在り方はVUCA時代に通用しない。ビジネスに役立つ能力を開発するプログラムを組むようになる。高校までの基礎知識に欠損があるのであれば、学び直しとして中等教育・高等教育レベルの数学力を身につける必要がある。数字に強くなければ、企業経営の状態を把握することができないからだ。
地方の産業に「人財」を送り込むことで地域経済を活性化させる金字塔的存在となれることに期待を寄せている。それだから、大学教育機関にてビジネススキルを習得できる学習環境を整備する。よって、地方企業に優秀な人財を獲得することができるといえよう。
他方、佐藤氏は商業高校、工業高校などの実務教育型の学校が教育困難校になりにくいと指摘する。その理由は資格や技能取得の環境が整備されているからだという。大学にも教養教育のほかに積極的に取り入れるべきだとの考えを示す。
最先端分野を積極的に学ぶ教育環境が整った学校で過ごした若者たちは「デジタルネイティブ世代」としてビジネス界で大いなる活躍ぶりをみせている。当然ながら、仕事に必要なスキルも習得している。
教育環境に恵まれなかった若者たちはこのような人々との能力の落差を縮めるためにビジネス講座を開いているキャリアセンターに相談してみるとよいかもしれない。たとえFランク大学であってもBF大学であっても、仕事に必要なスキルを身につければ現場で十分に活躍できる。長期的な視野を持って他者との経済格差を縮小することができる。もっとも、経済格差を是正するのは政治家の仕事になるが。
大学に通う者たちの学習意欲を高める教育プログラムを設定することが重要ではないかと、私は考えている。
<参考文献>
古谷経衡・佐藤優『日本人の7割が知らない 世界のミカタ』時事通信社 2024