『わたしの全てのわたしたち』/祖父江慎さんのブックデザインについて
2020年6月10日、『わたしの全てのわたしたち』(サラ・クロッサン=著/最果タヒ・金原瑞人=共訳)が発売されました。
原作は、2016年のカーネギー賞ほか、ヨーロッパで数々の文学賞を受賞にした、『One』というヤングアダルト向けの小説です。
腰から下がつながって生まれてきた結合双生児のグレースとティッピは16歳。二人はひとりひとりの人間だけれど、二人でひとりでもある。ひとりひとりのひとり。文字どおり体を共有している二人の、半分だけ共有している心。普通とはちがう幸せな日常、初めての学校生活、友情、恋、そして別れが、主人公グレースの視点から、詩のかたちで語られます。
最果さんと金原さんの共訳なんて、もうそれだけですごく豪華なのですが、今作は、さらに装画イラストを西山寛紀さん、ブックデザインを祖父江慎さんに手掛けていただきました。
校了まで何回とPDFで見ていたのに、初めて本を手に取ったときの、画面とはまったく違う感覚。まるで初めて見るような気持ちでページをめくりました。ページをめくって読む「本」って、やっぱりいいですね。
この本、判型はいわゆる四六版から左右が1cmずつ短くなった変形で、女性の片手にも心地よく収まるサイズ。
カバーイラストは、真ん中で重なるグレースとティッピ。蛍光きみどりの帯がさわやかなアクセントになっています。
本を開くと、見返しは鮮やかな蛍光オレンジです。四六版でソフトカバーの本だと、この見返しが表紙にのり付けされていることが多いけれど、ここは離れたまま。限定のサイン本は、ここに最果さんと金原さんのダブルサインが入ります。
見返しをめくると…
グレースとティッピのやさしく繋いだ手のやわらかさ、指先の表情……大好きな1枚です。
冒頭部分だけですが、本の中の文字組み、こここそ実は祖父江さんの真のすごさが見えるところ。
祖父江さんといえば紙のカミサマですが、担当にとっては、文字組みの魔法使い。詩を詩として読みながら、ストーリーが澄んだ流れのように自然に心に入るのは、祖父江さんのたくさんの秘密が詰まった文字組みのおかげなんです。
詩のタイトルは赤、本文は3種類のフォントが使われています。本文の紙も3種類(上の写真左側)。ひんやりした真っ白の紙、こっくりしたクリーム色の紙がミルフィーユのようにかわりばんこに重なり、物語のクライマックスには、もう1種類、別の紙が使われています。
最後に、カバーをめくった本の表紙も。ガラッと印象が変わって素敵なんですよ。
腰から下がくっついた双子の全身イラストが、表紙と裏表紙で異なったあしらいがされています。縦長の判型や、英語のタイトルと作家名が目立つデザインは、ちょっと洋書っぽい。
古いiPhone+下手くそなカメラワークで四苦八苦していたら、来た来たネコハラ。
ここで撮影終了。
共訳の金原瑞人さんが「奇跡の一冊」と呼んだ、『わたしの全てのわたしたち』。「詩の小説を読む」という新しい体験を、多くの方と分かち合えたら嬉しいです。
*最果さんと金原さんの豪華ダブルサイン本をご用意しています。書店さんのリストはこちら ↓
https://www.harpercollins.co.jp/template/default/harpercollins/pdf/news_20200601.pdf