満田のマコさんは宇宙人
きりかえ、トランジションってなんであんなにしんどいのか。
はじまってすぐくらいはいいのよ。足まわるから。でもこれが時間がたってくると、もうダメ。ウラに走ってパスカットされたときのもどるやつ、カウンターでボールよりたかいところまであがるやつ、むり。息あがってアタマまっしろ、足もまったく前にでやしない。いったん、局面きりかわったことをうけいれる休憩時間をもらわないと、ぜんぜんむりよ。
サガン鳥栖戦の日の午前中、フットサル(初心者むけ)にいってそんなことをあらためて再確認した。あぁこれが世にいう「きりかえがおそい」ってことなんだろうなと。
――いやいや、そうはいいますけどねって話ですよ。もう肺がひきつって呼吸もできないわけですよコッチは。酸素たりないからカラダのほうも「もらうもんもらえねえならうごけねえよ」とストライキ起こすし。そんなときもっかい逆方向に走れっていわれるんですよ? そりゃすこしくらい「マジかあ」ってぼやきたくなるでしょうよ。でもそれでぼやいてたらきりかえおそくて「致命傷になります」。バカいうなよ。もはや自然の摂理に反してるといわざるをえない。不条理。とうていうけいれられない。
でもウチの満田誠さんはすごくて、その現実を平気でうけいれちゃう。あのひとはもう大学時代からすでに自然の摂理に反してた。とにかくきりかえのときの「マジかあ」がまったくないひとだった。彼「はいはいわかってましたよ」みたいなツラしてふつうに反転して、プレスかけにいったり、かけあがったりしてた。なにそれ。なにその体力と肺の強度。あとなにより摂理と不条理を力技でねじふせるその精神構造ね、どうかしてます。
たぶん体力もそうだけど、ゲームの展開をちゃんと予測できてるというのもあるんでしょうね。きりかわった段階にはもうあらかた準備もおわってて、だからすぐきりかえられると。ウチの11番は知性の強度もえげつない。
サガン鳥栖戦も、前半からさんざん走りたおしてたはずなのに、終盤になってもかわらず。相手ボールになれば全力でおっかけまわし、つぶしにもいった。うばいかえせば、あきもせずまたかけあがり、ドリブルでくいこみ、重そうなクロスも蹴っとばした。なにをどうすればそんなアタマのねじ数本ぶっとんでるようなスタイルが身につくのだろうか。すこしは膝に手をついてうつむくとか「マジかあ」ってぼやいてよ。こっちがばかみたいじゃんか。キミはぼくたちおなじ人類じゃないのか。なんでひとりで勝手にいっちゃうのよ。まって、まってよ。どうかおいてかないでおくれ……。
フットサルから帰ってきて、肩甲骨あたりと鎖骨まわりの痛みと、両ハムあたりのハリにうめきながら、心のなかでそんなことをぼやいてた。ぼくからしたらサッカー選手みんな異常者だけど、満田誠さんはそのなかでも別格、別の格。もはや宇宙人、ウルトラマンである。出身熊本じゃなくてM78星雲だろぜったい。