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それでも大弥さんはウチの子です

 柴崎晃誠さんの引退を切り口に、今シーズンでもふりかえってみるか、などとおもいたってはみたものの、すぐにやめた。晃誠さんの話をすると、2018年の右サイドの"造り"の美しさをおもいだす。ぼくはその造りの復活をながいことのぞんでいた。そしてそのリヴァイバル・プロジェクトは、大スキな茶島雄介さんによってなされるものだとおもっていた。だから目をそらした。茶島さんにいろんなものを押し付けようとしている自分のブスさを直視できなかった。

 だからこのたび契約更新してくれた松本大弥さんのことを書くことにした。

 松本大弥さんのことを考えると、ぼくの知人のことをおもいうかべる。大学時代の知りあいで、卒業してからずっと金沢にいる。かれがいつの間にか結婚していて、お相手の影響でこれまたいつの間にかツェーゲン金沢のファンになっていた。

 ことしの年賀状には「松本大弥選手をよろしく。かえしてくれてもいいよ」と書いてあった。金沢での活躍をこっそり観ていたので「かえせ? 冗談じゃない、大弥はウチの子です」とあらためて返事を書いた。

 そういきがったところからの、今シーズンである。大弥さん、ぜんぜんゲームにからませてもらえず。ぼくはすっかり面目をつぶされた気分になった。スキッベ監督につめたい視線をおくることをがまんできなかった。あれだけいろんな指導者のみなさまが「チャンスはあたえられるものじゃない、つかむものだ」とクチをそろえているというのに。もちろん25番の起用頻度のこともふくめて。

 大弥さんは、そんななかでも、勘どころよく前線にあらわれてゴールする、"おなじみ"のすがたを見せてくれた。そこだけは、ホッとしている。天皇杯FC徳島戦の4点目。あのゴールは、ユースをおっかけてないぼくですら、おもいだされるものがあった。

 ただ、ツェーゲン金沢では、ウラ抜け、ターンしな、こぼれに反応、いろんなカタチからゴールをきめていた。もっといろんなことができるはずなのだ。披露する機会をあたえてもらえなかっただけで。さぞくやしかったにちがいない。

「帰ってこなきゃよかった」とかおもってないだろうか。心配でしかたなかった。ときおり、知人の年賀状にあった「かえしてくれてもいいよ」の字面がチラついた。

 だから今回の契約更新のニュースは、死ぬほどうれしかった。

 ぼくは吉田に観にいってはいないので、かれがいま、どういった役割をもってメンバ―に食い込もうとしているのかは、わからない。個人的には後方からのビルドアップに、という希望はあるけれど、あの凶悪3バックを解体するとなると、いまやっている強者のサッカーそのものに手をいれないといけない。いや、キャプテンも塩谷さんもいい年齢ではあるから、どのみち大本に手をいれるハメにはなるのか。だったらそのときこそ転換点。大弥さんのチャンスかもしれない。

 なんて、いかにもなシロートのおもいつきであるが、こうやってのんきなこと抜かしてられるのも、ひとえにかれがチームにのこってくれたから。

 ふんばれ、松本大弥選手。見かえしちゃれ。


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