自信を持つことも失うこともゆるされないポジション
ルヴァンカップ・名古屋グランパスとのファーストレグのあと「チームを救いましたね」と質問された川浪吾郎さん、いつもどおり明るく軽妙に切り返すかとおもいきや、とつぜん表情をこわばらせ、言葉をえらびえらび答えていた。
ふだんから「ナイス航平~」なんて前のめりに味方をほめて倒すようなひとが、いざ自分がほめられるとなると急に居心地わるそうにする。それが、ぼくにとってサッカーの内容や結果よりも印象的だった。
川浪さんは条件反射で身構えているようにも見えた。なんでそうなっちゃうんだろう。いろいろ考えをめぐらしているとき、ちらっと一瞬だけ、セカンドゴールキーパーがもつシリアスな側面をのぞき見した気がした。
ミス一個で大惨事、ポジションひとつ、コンバート不可。そんな逃げ道なし言い訳無用のゴールキーパーとしての日々を、あげくなかなかおもいどおりにいかないまま過ごす。……これはそもそもシリアスの度がすぎる。
そんな状況では、きっとどんなに自信があってものびた鼻っ柱は即へし折られるし、だからといって落ち込んでいてもなんにならないから、成立しているかどうかもわからない自信をもちなおして立ち上がらざるを得ない。そんな自信を持つことも失うことも許されない日々を、川浪吾郎さんは過ごしてきている。ひとからの称賛であれ非難であれ、批判を鵜呑みにしないのも、そりゃあそうなのだ。いちいちまにうけていたら身がもたない。
それでも川浪吾郎さんは生き残っているわけだから、もはや尊敬の念しかない。そしてどうにむくわれてくれ、とも願っている。強く。というかむくわれてくれなきゃ困る。そんな採算のあわない話、世の中にあっていいはずがないのだから。
だというのに、やっとこさ出場したゲームでディフェンスラインの裏に出たボールの対処があいまいだったってだけで、やいのやいのいわれちゃって。ぼくはがっかりした。対処法を試行錯誤するチャンスもあたえられない人間のミスひとつで「セカンドゴールキーパーがなあ……」なんて、そりゃないよと。
でもだからこそ今回、まさにその裏に出されたあとの対処で一発回答を出せたのはデカかった。目いっぱい手足をのばしてシュートをひっかけた瞬間、ぼくのアタマのなかに全面的にかかっていた「なんだかなあ」ってもやもやもが一気に吹き飛んだ。もう叫ばずにはいられなかった。それ見たことか。試行錯誤せず修正してみせたぞ川浪吾郎さんは。見たかコノヤロウ。ここ最近でいちばんの開放感を味わわせていただいた。
今日のセカンドレグもおそらく川浪吾郎さんが出る。かれは自分がどうこうよりなによりも、チームが勝つことを望む。応援している側としてもそこは尊重したいので、あえてかれ自身のプレー内容は二の次として、とにかく目標はセカンドレグの快勝といわせていただく。で、そのついでといっちゃあなんだけれども、試合後「つぎのステージ進出に貢献しましたね」なんて記者さんにほめられて、また居心地わるそうにするかれを見られればいいかなと。