背番号6の気長なたたかい

 先週のルヴァンカップ・清水エスパルス戦、チャジもいない、長沼洋一も今津もいない、永井もベンチからのスタートというなか、目についたのがひさしぶりのスタメン、青山敏弘。ふたつのシーンが印象にのこっている。

 ひとつめは開始早々。エスパルスをおしこむサンフレッチェ。チームのいきおいにのせられ、ボールのあるほうにふらふらとひきよせられる青山。そんな彼に「あんまいかないで!」みたいな声がうしろからかけられる。ハッとしてうしろをふりかえる背番号6。すぐにポジションを修正、カウンターにそなえる。

 ふたつめは相手のクリアボールがたかくあがったとき。"これは大丈夫だろう"とたかをくくって、のんびりともどっていた青山。すると相棒の野津田岳人に「アオさん、もっともどって」「カバーして」。すこし小走りになって位置をとりなおす。

 このふたつのシーンがひっかかった。

 いままでぼくは青山敏弘を中心に観てきたわけではない。うかつなことはいえないけれど、ひとに指示されてせっせとうごきまわる青山敏弘をひさしぶりに見た気がしたのである。

 もちろんサッカーなんだから、指示されない・コーチングされないなんてことない。ぼくのイメージのなかでのアオちゃんはそういうイメージだよ、というだけ。まるでセンパイに仕事をおそわっている新人バイトのようだなあ、って。

 それがまたぜんぜんイヤそうに見えなかった。すなおにしたがっていたし、なにより出場した45分間でみせた何本かのワンタッチパス、とってもきれいな軌道でとんでいて、あんなパス不満たらたらの状態ではとうてい蹴れるものではない。

 もちろんくやしいはくやしいはず。ずっとスタメンをかちとってきたひとだ。インスタにかきつけられたポジティブなメッセージもうのみにはできない。でも出おくれながらも、いまのサッカーにとりくんでいること、それ自体はけっこうたのしめているのではないか。とおもったらサッカーダイジェストでこんな記事が。どうやらそんなに的はずれというわけでもなさそうである。

 ぼくたちはだから、気長に青山敏弘の動向を見まもらなくてはいけない。器用なひとじゃないから彼は。エスパルス戦でも試行錯誤ととまどいの跡が観てとれた。記事でもまだまだといっていたし、時間はかかるだろう。
 
 それでも後輩たちや監督、コーチの言うことに耳をかたむけて、いまやっているサッカーにすこしでもにじりよっていってほしい。そうすれば、案外秋口ぐらいにはあっさり中盤のへそにドシっとおさまって、ゲームつくっているかもしれない。

 まァ、ぼくがもうおじさんなので、青山敏弘36歳にすこしでもながくプレーしてもらいたくてそうおもっているだけか。それでもいい、ぼくは青山敏弘に期待したいのである。

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