「よく見る、よく聞く、よくする」登壇内容書き起こし
こんにちは!スマートバンクのUXリサーチャー、Harokaです。
11月11日に『UXリサーチの活かし方 ユーザーの声を意思決定につなげるためにできること』を出版しました🥳
今日は出版当日です!(おめでたい👏)
出版当日、「デザインとリサーチで価値が実り続けるチームの作り方」イベントを開催🎉
マネーフォワードさまのオフィスで、『UXリサーチの活かし方』に関連する方をお招きし、イベントを実施しました。(当日の裏話レポートは後日お出しする予定です。お楽しみに!🤝)
元々60人のところを75人まで増枠したのですが、100人超えの方にお申し込みいただき、関心を寄せてくださったことに感謝申し上げます🙇
参加が難しかった方もいらっしゃるかと思いますので、スマートバンクの登壇資料をこちらでご紹介します。
タイトルは、「よく見る、よく聞く、よくする」。
教育者である羽仁もと子さんのお言葉を借りる形で、スマートバンクのチーム体制とお互いの関わりについてご紹介させていただきました。
登壇資料|よく見る、よく聞く、よくする
スマートバンクのプロダクトデザインの特徴(putchom)
今日お話しするのは、スマートバンクのプロダクトデザインの特徴と、実際進めていく上でどのように他職種を巻き込み協業しているかです。まずは、プロダクトデザインの特徴についてputchomからご紹介します。
今日登壇しているputchom、Harokaは組織でいうとプロダクト本部に所属し、それぞれデザイナー部、UXリサーチ部に所属しています。
プロダクト開発の現場においては、デザイナーはプロジェクトチームに所属しプロダクト開発のすべての工程に携わります。
リサーチャーはリサーチプロジェクト時のみチームに関わります。また、プロダクト開発チーム以外の様々なチームのリサーチを担当しています。
組織によってデザイナーとリサーチャーの責任範囲は異なるので、ここで専任のリサーチャーがいるスマートバンクの場合を説明します。
リサーチャーはユーザー調査やデータの保守運用が主な守備範囲です。モックを作ったり詳細なデザインをしたりといった、いわゆる実装の部分は担いません。
デザイナーはプロトタイピングはもちろんエンジニアが実装できるように詳細な設計までを行います。リサーチについては、関わるもののシナリオを書くといった業務は担いません。
プロジェクトには初期メンバーとして二人ともアサインされます。
デザインプロセスの全体はこんな感じです。
リサーチがあり、要件定義があり、プロトタイピングや詳細設計があり、実装に進みます。
全てのプロジェクトでこの通りにリニアに進むわけではなく、プロトタイプを作ってユーザーに当てた結果、リサーチに戻ることもあります。
リサーチフェーズでは、リサーチャーがリードします。PMとデザイナーはサポートを行います。
様々なリサーチ手法がありますが、インタビューを例にあげると、リサーチャーが実際にインタビューを設計・進行し、結果をまとめます。
デザイナーはシナリオで聞きたい内容を一緒に洗い出したり、レビューを行います。また同席して書記をとったり、提示するモックアップを作成したりもします。
要件定義フェーズについては、PMがリードします。リサーチャーとデザイナーはサポートに入ります。
このフェーズではPMが中心となって要件定義書を書きます。
先のリサーチでわかったことや、ユーザーの発言で事実として確認できたことがあればそれをベースに書いていきます。
リサーチフェーズがあるからこそ、手触り感を持って要件定義書が書けるし、議論も進みやすくなるように思います。
プロトタイピングフェーズではデザイナーがリードし、PMとリサーチャーがサポートします。
プロトタイピングのレビューには、リサーチャーも関わることが多いです。
例えば、Harokaさんからは「ユーザーが想像しやすい言葉になっていないかも?」などユーザー視点でのフィードバックをもらうことが多いです。
インタビューなどリサーチフェーズを一緒に行っているから指摘内容も想像しやすいです。
このように、プロダクト開発の各フェーズによって、リードはそれぞれで行うものの、他の職種も同じように並走し、自分の職種ならではの関わり方で進めています。
協業の工夫(Haroka)
先ほど、「リードはそれぞれ みんなでサポート」とputchom sanからご紹介がありましたが、Harokaからは、チームの中でそれぞれがどのように動いているのかをご紹介したいと思います。
チームの中でどのように動いているかのヒントとして、一つの写真を紹介します。これは幼稚園で園児たちが音楽会に向けて練習している様子です。
端にいる子が楽器を演奏する姿を、横にいるお友達が見ています。
今回の登壇タイトルである「よく見る よく聞く よくする」は教育者である羽仁もと子さんの言葉をお借りしました。
こうやってお友達のことを見て学ぶと、みんなでより良い音楽を奏でていけることでしょう。
何かを理解したいとき、学ぶときの第一歩は「よく見る」なんですよね。
そして、相手の言葉をよく聞いて、自分にも取り入れていく、そんなように感じます。
今ご紹介したことは、チームへの関わりにも通じるような気がします。
例えば、リサーチプロジェクトを始めるとき、タスクもある程度決まりますのでそれを職種ベースで分けることもできるでしょう。
でも、私はそうしません。まず、お互いの状況を知ることから始めます。
特に、私とputchom sanは組織の中で横断的に動くような職種ですし、プロジェクト理解がどの程度進んでいるかを含め近況を伝えあい、どんなふうにこの課題に取り掛かって行こうか、と話すのです。
リサーチャーとしては、デザイナーはリサーチ結果を手渡す相手です。
だからこそ、手渡されたときに必要十分な情報が揃って、安心して次のステップに進められるようにしたいと考えています。
リサーチャー視点では、ユーザーが普段使う言葉は何か、とかリアルな反応を得られるよう環境をどう整えるかなどを気にかけます。
一方、デザイナー視点では、どのシーンでサービスに出会うか、どんな気持ちでアプリを開くか、なんのためにこのツールを使っているか、メインタスクが何かを背景から捉えることが大事そうです。
これも、普段の業務を横で見て、気にかけている視点を拾えるようリサーチに反映しているとも言えます。
デザイナーの場合、誰の、どの課題を、どうやって解決するか、そこでどんな価値を提供するかは、ユーザー情報がないとぶれてしまいます。
それも、20代女性で東京に住んでいて、といった属性情報のみならず、もっと具体的に映像で思い浮かべられるような粒度で、周辺情報がないと難しいでしょう。
先ほどは、デザイナーという職種だから気に掛ける大まかな視点でしたが、関わる相手の状況を「よく聞く」ことによって、putchom さんだからこそのポイントを拾っていきます。
例えば、兼務しているプロジェクトの状況によっては、関われるタイミングが限られるかもしれません。
また、putchom sanは「一次情報があればあるほど助かる」と前々から教えてくれているので、インタビューには全件同席してもらうようスケジュールを調整します。
他、今時点でputchom sanの言葉で対象者についてどれくらい自分の言葉で話せるか?も気にしています。
ご自身で納得いくイメージがあれば、不足しているところを重点的に拾いますし、全くわからない!であれば広く一緒に探しにいきます。
そして、「よくする」ためにもう一つ大事にしていることは、お互いに同じ目標を見ることです。
目標を分解して、今回はこの不確実性を潰すためにリサーチを入れようと話し、リサーチ後の達成状態を一緒に言語化します。
惰性でリサーチするのではなく、リサーチをしないことのリスクと天秤にかけ、こういうことがわかっていると前に進めそうですよね、とputchom さんなど関わるチームメンバーからの言葉をよく聞くようにします。
スマートバンクは、相手の話をフラットに聞くスタンスのメンバーが多く、私に限らず自然と皆そうしている気もします。
「よく聞く」の中でも大事にしているのは、わからないことです。
事実として知り得ていないこと、想像でしか話せないことなど、Discovery Boardというデータベースに一緒に書いていきます。
各職種の視点で書かれるため、それらをできる限り多く聞けるように、リサーチャー中心に設計していきます。
DIscovery Boardの使い方についてはこちらもご覧ください⇩
先ほどのわからないことを、例えばインタビューを通じて情報収集する場合、putchom さんはじめ他職種にも同席してもらい、終了後には全員で集まって振り返りをします。
putchom さんはその場で「さっきの話だと、ユーザーさん的にはこうなっている想定でしたよね?」とか「こういう言葉を想像されていましたよね」と画面のUIをその場で調整して議論を整理してくれたりします。
リサーチャーは、インタビュー終了後発話内容を切片化してまとめ、チームが同じものを見て議論できるように環境を整えますし、お互いが職種の強みを持ち寄って議論を進めやすくしているとも言えます。
目標に対して、質の高いリサーチ活動にするー「よくする」ために、リサーチ進行時もシナリオや進め方など、本当に得たいものが得られているかチェックし、アップデートしながら進めていきます。
putchom さんからも「もっとこうしたらユーザーさんからこういった話が聞けるんじゃないか」といった提案をもらうこともあります。
Discovery Boardについて、事実として確認できたことは「確認済み」のところに移し、リサーチを通じて新たに生まれた「わからないこと」を追加していきます。
チームでリサーチを進めるとき、お互いの状況をよく見て、対話し、目標に向かって知恵を出し合う、そんな姿勢が大事なのではないかと思っています。
これまで、デザインも、リサーチも、ユーザーに対して視線を投げかけてきました。
でも、価値のあるサービスを届けるためには、その視線をメンバーや事業に対して投げかけることが重要なのではないでしょうか。
職種は一つの領域です。
同じ目標を持つならば、その領域のことを知ろうとし、どんな情報があれば、どんな状態になっていれば良さそう?という視点を持つことで、「よくする」ことに繋がっていくように思います。
「よく見る、よく聞く、よくする」をベースに、これからも良いサービスをチームで作っていきたいと思います。
今回発表した内容では扱いきれなかった、チーム全体の巻き込み方や情報共有、データの流通については拙書『UXリサーチの活かし方 ユーザーの声を意思決定につなげるためにできること』にも書いています。もしよかったらお手にとってお読みください。
これでスマートバンクの発表を終わります。
ご静聴ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?