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『笑顔の人』

『いい歯のために』というテーマで、募集されていたので投稿してみました。
#LimitlessCreationsのスタイルにはあまり無いテーマなのでどうなのか ?と思いましたが。
まぁ、遊び心で作りました。
軽い気持ちで読んで頂ければ幸いです。

#LimitlessCreations
#いい歯のために



真一は33歳。
人前で笑うことが嫌いだ。

口元を隠す癖が身についてしまっているのは、学生時代から感じていた歯に対するコンプレックスが原因だ。

少し黄ばんだ歯並びの悪さが、彼にとっては深い劣等感になっていた。
笑顔が大事だと感じながらも、つい歯を見せないように慎重に振る舞ってしまう。

ある日、友人の結婚式に参加した際、彼は自分のコンプレックスと再び向き合うことになる。

華やかな式場で、周りの友人たちは思い思いに笑顔を見せ、楽しそうに話している。 

真一も久しぶりの再会に懐かしさを感じつつ、心の奥で自分だけが取り残されているような寂しさを感じていた。

写真撮影のときも、できるだけ口元を隠して笑おうとする自分に気づき、改めて「変わらなきゃ」と思うのだ。

そんな帰り道、彼の目に飛び込んできたのは駅前の歯科医院の広告。

「自信のある笑顔を取り戻そう」という言葉が、大きく掲げられていた。


立ち止まってその広告を眺めていると、彼の胸の奥に「もし治療ができたら」という小さな希望が生まれた。

しかしすぐに頭をよぎったのは、その治療費のことだった。
歯科治療にはかなりの費用がかかることは知っている。
しかし、もうこのままではいられないという気持ちが彼を突き動かし、その夜、家に帰るなり真一は治療の予約を入れた。

治療が始まると、真一はまずその高額な治療費を賄うために副業を探し始めた。
普段の仕事でも忙しい毎日だが、治療費を稼ぐためにアルバイトを掛け持ちすることを決意する。

週末や夜間のアルバイトを増やし、睡眠時間も削って日々働く中で、彼の体はどんどん疲労が蓄積していく。

しかし、「自分を変えるための投資」と自分に言い聞かせ、必死に働き続けるのだ。
歯科医院で少しずつ進む治療の様子を鏡で確認するたびに、彼は「この努力がいつか報われる」と信じ、再び仕事へと向かう。

しかし治療は一筋縄ではいかなかった。

矯正やホワイトニングの過程で、真一は度々強い痛みに襲われた。
食事をするのも難しいと感じるほどの歯の痛みや不快感が続き、彼は何度も挫折しかける。

ある夜、彼はアルバイトから疲れ果てて帰宅し、鏡の前で無表情な自分の姿を見つめた。

そしてついに、「もうやめてしまいたい」という思いがこみ上げてきた。

しかしその瞬間、彼の携帯に届いた友人からのメッセージが目に入る。

「君の決意、すごいと思うよ。応援してるから」との言葉に、真一は胸が熱くなり、ここで投げ出すわけにはいかないと再び奮起するのだった。

時間が経つにつれ、治療の効果が少しずつ表れ始めた。

真一は鏡の中の自分を見つめ、歯が並び、白さを取り戻していく姿に小さな喜びを感じるようになった。

職場でも、ふとした瞬間に歯を気にせず話せるようになり、同僚から「最近なんかいい感じだね」と声をかけられることも増えた。 

心の中に秘めていた劣等感が少しずつ消え、新しい自分が顔を出し始めていることに、真一は気づき始める。

最終的な治療が終わり、真一は鏡に映る自分を見て驚いた。

そこには、かつてのコンプレックスが消えた、自信に満ちた自分がいたのだ。

友人との会話や同僚との仕事でも、もはや歯を気にすることなく自然に笑顔を見せられるようになった。
彼はふと振り返り、この変化が単に外見だけのものではないことを感じる。

治療のために努力を続け、痛みに耐えた日々が、彼の心に大きな自信を与えていたのだ。

真一は改めて、自分を変えるために必要だったのは、勇気と行動力、そして少しの努力だと実感する。

そして今、彼は新しい目標を胸に抱き、これまでとは異なる明るい未来に向かって歩み始める。

#いい歯のために

#LimitlessCreations


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