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少子高齢化が進む日本社会では、介護を必要とする家族を抱える従業員が増加しています。そのため、介護離職が企業にとって大きな課題となっています。特に中小企業では、限られた人材が貴重であり、介護を理由にした離職は事業運営に大きな影響を与えかねません。従業員の介護離職を防ぐために、企業は「時差出勤」や「短時間勤務」といった柔軟な勤務制度を導入することが重要です。

介護離職の現状と課題

介護離職は、特に40代から50代の働き盛りの従業員に多く見られます。この世代は企業の中核を担うことが多く、彼らが退職することは企業にとって大きな損失となります。中小企業においては、限られた人材で運営を行っているため、ひとりが抜けることによる業務負担が大きくなり、結果として他の従業員にも影響が及ぶことがあります。

このような状況を防ぐためには、介護と仕事の両立を支援する制度の整備が必要です。特に、フレックスタイム制が導入しにくい中小企業では、時差出勤短時間勤務といった柔軟な働き方が効果的です。

時差出勤の活用

時差出勤は、従業員が始業・終業時間を柔軟に調整できる制度です。フレックスタイム制が難しい企業でも、時差出勤なら比較的簡単に導入でき、業務に与える影響も最小限に抑えることができます。

時差出勤のメリット

  1. 介護スケジュールに対応  介護を必要とする家族の送迎や医療機関への受診が必要な場合、通常の勤務時間では対応が難しいことがあります。時差出勤を活用することで、例えば始業時間を1~2時間遅らせることにより、従業員は介護に必要な時間を確保できます。

  2. 業務への影響を抑える  時差出勤は、従業員が勤務時間内に業務を行うため、企業全体の業務運営に大きな混乱を招くことはありません。これにより、従業員は安心して介護と仕事を両立することが可能です。

  3. 従業員のモチベーション向上  従業員に柔軟な働き方を提供することで、介護の負担が軽減され、離職のリスクを低減できます。従業員が安心して働ける環境を整えることは、結果的にモチベーションの向上にもつながります。

短時間勤務の導入

短時間勤務は、従業員が通常の勤務時間よりも短い時間で働くことを許可する制度です。これは、特に介護が一時的に集中する期間や、介護負担が大きい場合に効果的です。

短時間勤務のメリット

  1. 柔軟な勤務形態  従業員が介護に集中できる時間を確保しつつ、仕事を続けられる環境を提供することができます。例えば、1日6時間や7時間の勤務とすることで、従業員は介護に必要な時間を確保しやすくなります。

  2. 企業側の対応がしやすい  中小企業にとって、完全なフルタイム勤務を維持しながらも従業員の介護負担に配慮することができ、業務の効率性を保ちながら柔軟に対応することが可能です。繁忙期や特定の業務に対しても、計画的に人員を調整することができます。

  3. 段階的なキャリア復帰の支援  短時間勤務は、従業員が介護と仕事の両立に慣れてきた場合や、介護負担が軽減された際に、フルタイム勤務への復帰をスムーズに行うことができるため、従業員のキャリア継続にも寄与します。

実際の導入事例

1. 時差出勤の例  従業員が午前中に介護施設への送迎を行う場合、通常の9時始業を10時始業に変更し、その分終業時間も1時間遅らせる形で調整します。このように、始業・終業時間を柔軟に調整することで、介護に必要な時間を確保しつつ、企業の業務にも影響を与えないようにできます。

2. 短時間勤務の例  介護が集中する期間だけ、1日6時間の短時間勤務を認めることで、従業員が介護に専念しやすくします。企業側は、その期間中に業務の配分を見直し、他の従業員にサポートをお願いするなどして対応します。こうした制度は、介護終了後にフルタイムへ戻る際にもスムーズに移行できます。

企業が行うべき他の支援策

  1. 介護に関する情報提供や相談窓口の設置  従業員が介護に関する不安や疑問を抱えないように、企業内での介護に関する情報提供や相談窓口を設けることが有効です。例えば、外部の専門家を招いたセミナーの開催や、介護相談窓口の利用を促進することが考えられます。

  2. 介護休暇制度の整備  介護のための一時的な休暇を従業員が取得しやすくするため、柔軟な介護休暇制度を設けることも効果的です。

まとめ

介護離職を防ぐために、中小企業でも導入しやすい時差出勤短時間勤務の制度を活用することは、従業員の負担を軽減し、介護と仕事の両立を支援する有効な手段です。企業がこのような柔軟な勤務制度を提供することで、従業員が安心して仕事を続けられる環境を作り、結果的に企業全体の生産性向上や従業員定着率の改善にもつながります。介護離職を防ぐことは、企業の持続的な成長を支える重要な取り組みの一つと言えるでしょう。

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