CFP(カーボンフットプリント)を減らすには?
「CFP(カーボンフットプリント)」という言葉については、気候変動関連の用語として聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。CFPが具体的に何を意味するのか、減らすためにはどのような方法があるのか、自分の生活で出るCFPがどのくらいかとなると、あやふやだということもあるかもしれません。
今回はCFPの基本から、個人のCFPの排出量の計算方法、CFPを減らす方法までをご紹介します。CFPを意識して、気候変動を促進する温室効果ガスを出さない生活に少しずつ移行していきましょう。
CFPとは
CFPは、ものやサービスのライフサイクルの全工程において排出される温室効果ガス(GHG)を二酸化炭素(CO2)に換算したものです。ものやサービスのライフサイクルには、原材料の調達から生産、流通、販売過程を経て、わたしたち消費者の手元に届いたあと処分されるまでを含みます。
CO2をはじめとするGHGは、気候変動の原因となっています。これらの排出量を減らすための全世界的な試みのひとつとして、CFPの把握と表示が始まりました。
気候変動問題に対してサプライチェーン全体の努力を促す材料になると同時に、消費者にとっては、気候変動に積極的に対処している企業であるかどうかを判断する材料になるでしょう。
日本ではイオンやシヤチハタ、日本ハム、マイカルなど約300の事業者が経済産業省主導でスタートしたCFP制度事業に参加しています。CFP制度事業に参加してGHGの排出量を算定した商品やサービスには「CFPマーク」が表示されています。CFPマークは、GHGを減らす生活をする手助けになるでしょう。
CFPを計算してみよう
GHGは生活にまつわるあらゆる分野で排出されているため、排出量を減らすためには、衣食住や交通手段を見直す必要があります。CFPの排出量を計算するツールはアメリカやイギリス、日本の団体が公開しており、例えばCARBON CALCULATORや、Carbon Footprint Calculator、あなたの1年間のカーボンフットプリント量などで、食べものや交通手段、住宅設備、再生可能エネルギー利用の有無などに関しての質問に答えると、年間のCFP排出量がわかる仕組みです。
ここではイギリスのWWFが公開しているツールをもとに、食べものや交通手段、住宅、その他の項目に関する質問を順番に見ていきましょう。
WWFのトップページはこのようになっており、「TAKE QUESTIONNAIRE」をクリックするとスタートします。
食べもの
・肉を食べる頻度
・外食やテイクアウトを利用する頻度
・購入した食品を廃棄する割合
・国内産の食品の割合
交通手段
・「車、バイク」、「徒歩、自転車、公共交通機関」のいずれがメインであるか
・通勤やプライベートで電車とバスを何時間くらい使うか
・過去1年間で何度飛行機(国内便、国際便)を使ったか
・利用した飛行機のうち、カーボンオフセットしている割合
住宅
・住居は戸建て、集合住宅(大規模、小規模)のいずれであるか
・部屋の数と家族の数(家族の数に応じた、コンパクトな家であるか)
・エアコンの電力は再生可能エネルギー由来であるか
・使わない部屋の電気や電化製品をこまめに消しているか
・エアコン(暖房)の設定温度
・エネルギー効率を上げる設備の有無(ソーラーパネルや二重ガラス、省エネ電球、断熱材など)
その他
・過去1年間で新しい大型家具や家電、パソコン、スマートフォンなどを購入したか
・服飾費の月平均予算
・ペットにかかる費用の月平均予算
・美容、健康のための月平均予算
・電話やインターネット、TVなどの月平均予算
・エンタメや趣味(ジムや映画、本、ゲーム、新聞、ガーデニングなど)の月平均予算
・食べものや紙類、プラスティック、缶、ビンをリサイクルまたはコンポストに回すか
筆者が個人のCFP排出量を、WWFのサイトで実際に計算してみた結果、年間8.4トンで、イギリス人の平均排出量に対して91%でした。これは、世界平均の6.3トンと比較すると1.3倍多いという結果です。次に計算するときには、もう少し減らせるように生活を見直してみようと思います。
CFPを減らす方法
上で見た項目ごとに、どうすればGHG排出量を減らすことができるのか確かめていきましょう。
食べもの
肉食、とくに牛肉の生産過程で大量のGHGが排出されるため、肉を口にする頻度を落として、プラントベース(※)の食生活を選ぶことがGHG排出量の削減につながります。テイクアウトを利用する際には個別のプラスチック容器が使われることが多く、家庭で同じメニューを調理するよりも多くのGHGが排出されることになるでしょう。ただし、外食については家庭での調理と比較してより多くのGHGが排出されるかどうかについての研究結果は見つかりませんでした。
※ プラントベースとは、野菜や大豆といった植物由来の食品を積極的に取り入れる考え方を指します。ただし、肉や魚、たまご、乳製品など動物由来の食品をゼロにするわけではありません。
肉だけでなく穀類や野菜、果物など食料のCFPも小さくありません。特に地元や国内で生産されたものではなく、遠い場所から運ばれてきた食べもののCFPは大きくなります。多くのCFPを排出して手元に届けられた食べものを残したり、使わないまま消費期限を過ぎて食品ロスが発生する場合には、手元に届くまでに発生したすべてのCFPが無駄になるだけでなく、焼却処分する場合にはさらにGHGを発生させることになります。フードロスは限りなくゼロに近づける工夫ができるといいですね。
交通手段
交通手段については、車やタクシーやバイクではなく、電車やバスといった公共交通機関を使うか、自転車や徒歩を選択することでGHGが減らせます。交通手段の中で最もGHG排出量を減らすのに効果的なのは、飛行機の利用を減らすことです。飛行機に乗る際にはカーボンオフセットのオプションを選択すると、カーボンニュートラルな状態に戻すことができると考えられています。
カーボンオフセットの方法は主に2つあります。1つ目は、食用油などを原料とするバイオ燃料を使用する航空会社を利用すること。2つ目は、飛行機の利用で発生したGHGと同量のGHGを削減・吸収するプロジェクトに投資するための料金を上乗せして支払う仕組みを使うことです。
住宅
住宅に関しては戸建て住宅よりも大規模な集合住宅の方が熱効率がよく、CFPを減らすことにつながると考えられています。そのほか、ソーラーパネルや二重ガラス、省エネ電球、断熱材などエネルギー効率を上げる設備があること、家族の数に対して必要以上の部屋数がないこと、エアコンの設定温度を極端に低く(高く)しないこと、再生可能エネルギーによって発電している電力会社を選択すること、使わない電気はこまめに消すなどの方法があります。
その他
家具や家電を短期間で買い換えると、GHG排出量を増やすことにつながります。これは、廃棄処分にも、新しいものの生産過程でもGHGが発生するためです。特に木製の家具の原料となる樹木はCO2を吸収する存在であるため、一度手に入れたものはできるだけ長く使いたいものです。
気候変動の文脈におけるペットの問題としては、肉を原材料とする犬猫用のペットフードのGHGが取り上げられています。2017年の研究結果では、アメリカで飼われている犬と猫が消費するエサをカロリー換算すると、アメリカ人が消費するカロリーの21%を犬と猫が消費していることになるといいます。
パーソナルケア用品に関しても、ライフサイクルの全工程においてGHGを排出することは間違いありません。必要なものだけを厳選して、購入したものは最後まで使い切ることが求められるでしょう。
また、パソコンやタブレットなどでインターネットのウェブサイトを表示する際にもCO2が排出されます。平均的なサイトが表示されるのに排出されるCO2は0.5g。動画やアニメーションを含むなどによって複雑に作り込まれたサイトであれば、その量がさらに増えることになります。
ウェブサイトのCO2排出量はこちらのサイトにURLを入力すると計算できます。
CFPを減らす行動を始めよう
CFPを減らすためには、今あるものを修理・修繕しながら長く使い続けること、何かを買うときには中古品から選ぶこと、飛行機や車に乗らないことといった、ある意味地味で心躍るとはいえないような行動が最も効果的であるといえるでしょう。
新品を買うときには、CFPを減らす行動を促す施策を行っているパタゴニアやAllbird、KAPOK KNOTといったブランドを選ぶことも選択肢のひとつになるかもしれません。
ただ、華やかさや喜びに欠けるように見えても、愛着のあるものをお手入れしながら長く使う生活は、静かな満足感を教えてくれると筆者は感じています。この記事の執筆にあたってWWFのサイトで計算したCFPの数字を見て、車での移動を減らすためにセカンドハンドの自転車の導入を思い立ちました。読者のみなさんはCFPを減らすために、どんなことを取り入れたいですか。
下記は当記事執筆の際に参考にした情報のリストです。より詳しく知りたい内容については、ぜひリンク先をご覧ください。
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CFPに関する基本情報をはじめ、カーボンオフセットについて、省資源・省エネルギー生活について解説
CO2排出削減に直結!?食品ロスと地球温暖化の関係とは|アスエネメディア
食品ロスの現状と、削減のための取り組み、個人でできることを紹介
Environmental impacts of food consumption by dogs and cats|PLOS ONE
アメリカのおける犬猫用のペットフードが環境に与える影響について
The original Website Carbon calculator|Website Carbon Calculator
ウェブサイトから排出されるCO2について
文:森野みどり