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航空と海運

二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスは、あらゆる産業部門での排出削減が求められています。今回は脱炭素が難しいといわれる運輸部門、特に航空と海運における二酸化炭素(CO2)、温室効果ガス(GHG)の排出状況を見ていきましょう。

運輸部門におけるCO2の排出量

最初に、産業部門ごとのCO2を確認します。2016年のCO2排出量は全世界で494億トン。エネルギー起源と呼ばれる、石炭や石油といった化石燃料を燃やすことで排出されるCO2の割合は73.2%で約362億トン。そのうち、運輸部門の割合は16.2%です。

(出典:Global greenhouse gas emissions by sector|Our World in Data)


下の表は2018年の運輸部門のCO2排出量の内訳を表しています。

(出典:Global CO2 emissions from transport|Our World in Data)

運輸部門で排出量が最も多いのは、人の移動に伴う車やバイク、バス、タクシーからで全体の45.1%を占めていることがわかります。次いで荷物を運ぶトラックなどの貨物自動車が全体の約3割ほど。航空と運輸部門が1割強ずつという割合で、鉄道が排出する二酸化炭素は運輸部門のわずか1%です。

航空輸送

次に、航空機で輸送されるものの内訳を見ていきます。

航空輸送を使えば世界中のほぼあらゆる場所に、3日以内にものを届けることができる時代です。肉や魚介類、野菜、果物といった生鮮食品や、切り花といった鮮度が命となる商品、緊急を要する医療機器やワクチンなどの医薬品、クリスマス用品や松茸、チョコレート、ボジョレ・ヌーボーといった季節ものの食品、PCやスマートフォンなど素早い納期が求められる製品、貿易関連の重要書類、ペットなどの輸送に航空便が活用されています。

次のグラフの赤い線は、航空部門で排出されたCO2です。この数値には、旅客機と貨物機の両方から排出されるCO2が含まれています。

(出典:global carbon dioxide emissions from aviation | our world date)

CO2の排出が1970年ごろから急速に増え始め、2010年の金融危機からは年4-5%のペースで増加、2018年には10億4000トンに至っているのが読み取れるでしょう。

航空部門からのCO2排出量に関しては、国際民間航空機関(ICAO)が2050年までに実質ゼロにする長期目標を採択しています。ただし、国際航空部門の排出量は2021年の3億8,446万トンから、2030年には5億4,145万トンと40%以上も増えると予想されているだけでなく、目標を達成するための具体的な手段や道筋が示されているとは言えません。

海運

海上輸送は航空輸送に比べて時間はかかるものの、輸送費が安く、重量が重いものを扱える点がメリットです。2013年の実績を見ると海上輸送は、重量ベースで貿易全体の99.7%、金額ベースで76.7%を担っています。

海上輸送で運ばれるのは食料品や日用品、衣料品、電化製品といった身近なものから、石油や天然ガス、石炭、鉄鉱石といった資源、車や電化製品などあらゆるものの材料や資材、機械、道具類など多岐にわたります。

下の表は、2007年から2015年にかけて化石燃料を燃やすことによって排出された世界全体でのGHGの排出量と、国内外の海運業、漁業から排出されたGHGの量を表したものです。

(出典:Shipping CO2 emissions compared to global CO2 emissions | GREENHOUSE GAS EMISSIONS FROM GLOBAL SHIPPING, 2013–2015)

2012年までと2013年からの間で調査主体が変更されたため、国際海運、国内海運ともに変動が見られるものの、国際海運からの排出量が9割近くを占めていることがわかります。また、国際海運、国内海運、漁業のいずれの分野でも、GHGの排出量は上昇傾向にあることが読み取れるでしょう。

なお、CO2はGHGを代表する物質で、下のグラフを見ると2010年に排出されたGHGの総量のうち3/4以上を占めていることがわかります。

(出典:温暖化とは?地球温暖化の原因と予測|全国地球温暖化防止活動推進センター)

また、今後の海運部門からのCO2の排出量予測は次のようになっています。

(出典|Projections of maritime ship emissions as a percentage of 2008 emissions | FOURTH IMO GREENHOUSE GAS STUDY)

SSP2、SSP4とは各国が気候変動対策を比較的積極的に行った際の予測を示しており、2008年の排出量と比較して、2050年には最大で130%アップすると予測されていることがわかります。

航空・海運部門のGHG削減のために個人ができること

航空・海運部門で排出されるCO2とGHGの内訳について見てきました。航空・海運部門で扱われるものには、乗用車や食品、日用品、衣料品、電化製品、薬品など生活に関わる多くの分野が含まれ、グローバル化の影響が気候変動の大きな原因のひとつであることがわかります。

CO2に代表されるGHGの排出量を減らすためには、乗用車ではなく電車やバスといった公共交通機関を使ったり、輸入品ではなく地元や国内で生産されるものを選んだり、飛行機での移動を控えるなど、カーボンフットプリントを意識した行動が求められます。

カーボンフットプリントとは、商品やサービスの原材料調達から生産、流通を経て処分されるまでに発生するGHGをCO2換算して得られる数値のことで、世界中で行われているGHG削減のための取り組みのひとつです。

下記は当記事執筆の際に参考にした情報のリストです。より詳しく知りたい内容については、ぜひリンク先をご覧ください。

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海上・航空輸送の特徴!どっちで輸送するのが最適?|Worldship Search

海上輸送と航空輸送の違いや、それぞれを使って運ばれるものの詳細、メリット・デメリットについて

States adopt net-zero 2050 global aspirational goal for international flight operations |ICAO

国際航空部門を管轄する国際民間航空機関(ICAO)が採択した「国際線運航におけるネットゼロ2050」

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海上輸送と航空輸送の違い、海上輸送が多い理由

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気候変動を予測する際の指標「SSPシナリオ」の解説

文:森野みどり


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