CFP(カーボンフットプリント)の小さい旅をしよう
台風の威力の増大とそれに伴う洪水、猛暑日の増加など、気象イベントが極端さを増し、気候変動の影響が感じられる昨今。個人レベルでも二酸化炭素(CO2)をはじめとする、GHG(温室効果ガス)の排出抑制方法を考えたいものです。今回は、CFP(カーボンフットプリント)の小さな旅について考えていきましょう。
CFP(カーボンフットプリント)についての詳しい記事はこちら。
環境に配慮した旅の需要
最初に、CFPが小さく環境への負荷が少ないサステナブルな旅の需要がどれくらいあるのか確かめてみたいと思います。世界的に経済活動が急速に滞り、旅行者の数や路上を走る車が激減したコロナ禍によって、私たち人間の活動が環境に与える影響は世界中の人が知るところとなりました。パンデミックが落ち着いた現在、旅行者の認識はどれくらい変わったのでしょうか。
上のグラフは、観光産業はサステナブルであるべきと考える旅行者の割合が83%であること、また、69%の人がよりサステナブルな旅行の選択肢を欲していることを示しています。右端のグラフからは、61%の人がパンデミックの経験をとおして今後の旅行がよりサステナブルなものであって欲しいと考えるようになったことがわかります。あなたはどう考えますか。
移動手段
次に、旅行にまつわるGHGの排出量の内訳を見てみましょう。
上のグラフを見ると観光産業から排出されるGHGのうち、17%が航空機、14%がバスや車などの道路を使った移動などと、全体の約半分を交通機関が占めていることがわかります。続いて小売業が12%、食べものや飲み物が9%、農業とサービス業が8%、宿泊施設が6%などとなっています。
CFPの小さな旅をするためにはまず、交通手段の選択によって結果が大きく変わることがわかるでしょう。可能なときには航空機を使わずに移動することで、旅のCFPは小さくなります。さまざまな問題が指摘されているものの、フランスでは今年の5月23日から、鉄道で2時間30分以内の距離で国内線の旅客機を禁止する政令が公布されました。
航空機を利用する場合には、持続可能な代替燃料を採用している航空会社を選ぶことで、CFPを小さくすることができます。日本の航空会社をはじめ世界各地で少しずつ、化石燃料に代わる、GHG排出量の少ない代替燃料の導入が進められています。また、排出されるGHGを相殺するための植樹や、太陽光発電の導入といった活動に投資するカーボンオフセットの仕組みを利用することも有効であるといえるでしょう。
旅先での移動にタクシーや車ではなくバスや電車といった公共交通機関を選ぶ、自転車や徒歩で移動するといったこともまた、CFPの小さな旅に寄与します。
飲食物
次に、旅行中の食べものや飲みものについてです。旅の途中で口にする食べものや飲みものからのGHGを少なくするためには、牛肉をはじめとする肉食を控えて野菜や豆類、果物といった植物由来の食べものを中心とした食事がおすすめです。
上のグラフからは、牛肉の生産過程で出るGHGが際だって多いことが読み取れます。牛肉の生産過程の中でも特に牛のゲップに含まれるメタン(グラフの茶色い部分)と、森林を切り開いて牧畜用地にすることにより原因が大きな割合を占めているのがわかるでしょう。
日常生活ですでに実行している人も多いかもしれませんが、使い捨てのペットボトル飲料を控えてマイボトルを使う、カトラリー類、マイバッグを持ち歩いて使うのも効果があります。
宿泊施設など
1つの宿泊施設に連泊する際には、シーツ交換や清掃の頻度を落とすことで、CFPを小さくできます。日常生活でも同じですが、洗濯機や掃除機を稼働し、水を使い、排水を処理する回数が増えればその分、二酸化炭素を使うことになるからです。
宿泊施設に関しては、大型のホテルなどではなく、Airbnb(エアビー)などの民泊の方がCFPを意識する旅との親和性が高いと考えられます。これは大型のホテルでは全館で常時、空調が稼働しており、より多くの電気を使うのが理由です。
歯ブラシやシャンプー類などを持参して、アメニティの使い捨てを避ける行動も旅のCFPを小さくすることにつながります。
旅行に出るとお土産が欲しくなる人が多いかもしれません。ただ、ものを作る際には基本的にCFPの排出から逃れられないことを心にとめて、ローカルのショップで最小限の買い物にとどめるのがCFPの小さな旅でのお土産との付き合い方といえるでしょう。
このほか、飛行機や車を利用する際の荷物を少なくして重量を減らすと、必要な燃料が減ることから、CFPを小さくすることにつながります。
下記は当記事執筆の際に参考にした情報のリストです。より詳しく知りたい内容については、ぜひリンク先をご覧ください。
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文:森野みどり
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