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杞憂の要塞

わが家の一角に要塞がある。

主は用心深いのか殆ど姿を見せない。

そいつの名はそう、コシアカツバメ。

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6月12日、その日は穏やかな晴れだった。

毎年訪れるツバメは今年はカラスの妨害もなかったのか、誰一人巣から落ちることもなく元気にふくふくと育っていた。

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巣から落ちた卵をみるほど切ないことはない。
頭がいいカラスは巣を見つけると巡回してタイミングを見計らって襲うのだそうで、当然わたしたち家主が居合わせて追い払うことは不可能だった。

そんな儚い命が今年はどれもかけることなく元気に育ってくれた。
この翌日ツバメたちは巣立っていった。

最初に巣の異変を感じたのはそれから1週間後のことだった。
わたしはツバメがまだ子ツバメの飛行訓練で近くにいたため戻ってきたのだと思っていた。
或いはシーズン2組目のツバメカップルがやってきたのだと思った。

子ツバメの姿はなく、果たしてふたつめの予測が合っていたのだけれど。

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!!
巣が補修されている!?

違う色で巣がもりもりされている。
これまで雀のやんちゃやスズメバチの巣材強奪で壊れそうな巣をやきもきして見守ったことはあってもツバメたちが引っ越してくるまでボロボロが続くのが常だったのでこれは珍しい。

喜ばしい気持ちで見守っていたのだが、様相が怪しくなってきたことに気づいたのは先月も終わりの29日だ。

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入口が狭い。狭すぎる。

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そしてとうとうこうなってしまったのだった・・・要塞。

入口が狭すぎる。
これではふくふくした雛たちが顔を並べて一斉に餌をねだる様は拝めそうにない。

調べればこれはコシアカツバメというツバメのスタンダードな巣の作り方。

警戒心が強い種なのか、人の気配を察すると一羽だけが穴から顔を出し颯爽と飛び立っていく。カメラを構える隙すら与えない。
よってこんな味気もない写真ばかり。

コシアカツバメがわが家に営巣するのは初めてだ。
おかげで心配事が増えてしまった。

雛たちはずっとあの要塞の暗闇の中密密しながら過ごすのだろうか、とか。
一体何羽があの中で過ごすことになるのだろう、とか。

こんなことをしてしまったら来年普通のツバメが帰ってきたときに全く使えないだろう、とか。

それは、かなしい。

でも目の前のコシアカツバメを追い払うことなんてできようはずもなく。
疑問は膨らむばかりだがそんなわたしを尻目に今日もツバメは愛想もなく警戒心を露わに飛び去って行くのであった・・・つれない。

ひなが生まれたら一体どうなってしまうのか。
そんなことを思うのは人間側だけ。比較を知る心だけ。

ツバメは自然の摂理と遺伝子に組み込まれた情報に従ってしかるべき時になすべきことをなすのだろう。
完璧に。

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