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我が家のお茶の作り方

我が家では、先祖代々のお茶の作り方がある。

といっても、そう大したものでもないのだが、昔からこの季節には一年分のお茶を作り置きしないといけなかった。その時代のやり方を今も受け継いでいる。

ここ数日、不安定な気候で雨や風が強いが、今朝はなんとか日が射した。朝8時から実家の敷地に生えたお茶の新芽を摘んでいく。

若い頃は面倒臭かったが、歳をとったせいか、地道なこの作業も苦にならない。逆に、静かに集中できるこの時間がとても幸せだ。

しかし、鹿が里におりて来るようになった昨今、新芽がやけに小さいと思ったら実は食べられていたようだ。1時間ほどで摘める茶葉が無くなってしまった。とても一年分とはいかないが、大事にお茶にしていく。

我が家のお茶作りは、まず、鉄鍋で摘んだばかりの茶葉を焙じる。

この鉄鍋も曾祖母さんの頃からのものなので、かれこれ100年以上にはなる。火にかけて、茶葉を入れて、プチプチと小さな音が聞こえたら、焦げないように混ぜていく。全体がしんなりとしたら、揉みに入る。

母親が言うには、最低200回以上は揉まないといけないという。揉みかたは秘伝(笑)。右へ左へと揉んでいく。子供の頃にその様子を見ながら、「何それ、変なの、踊りみたい。」と言って笑っていたのを思い出す。

揉んでいると淡い緑色の泡が出てくる。はずなのだが、私が今朝摘んだ茶葉は、小さくて葉も少なく、あくも少ないのか、あまり汁が出てこない。或いは、今回は軍手を履いて揉んだので、汁を吸ったからかもしれない(いつもは素手で揉むのだが、昨日不覚にも牛の肉をたらふく食べてしまったので、手から出る油・獣臭がつかないようにビニール手袋の上に軍手を履いて揉むことにした)。

ともあれ、200回、さらに念を入れて300回揉んで、一旦むしろの上に広げる。

本当は日に当てたいところだが、今日は天気が不穏ななため、仕方なく屋内での作業。母親曰く、それはそれで変色しないから綺麗かも、とポジティブ。

1時間ほどしたら、揉み返しといって、再度、200〜300回ほど揉む。もう汁はあまり出てこない。

あとは、もう一度むしろの上に広げて干して、乾燥したら、焙じて出来上がり。
明日以降、天気が良ければ日に当ててもらうよう母親にお願いする。

さて、このお茶。作り方は一般のものとは違うかもしれない。揉んだ茶葉を焙じるのがほうじ茶と言うのかもしれない。でも、我が家では代々この作り方。

何年前のことだろうか。母親がこのお茶を農協の販売所に出品したことがある。すると、購入したお客さんから電話が入った。その人の母親(90代のおばあさん)が弱っていて水分を少しでも取らせないといけないが、どんなお茶を入れても飲まない。ところが、農協で売っていたこのお茶を飲ませると『これがお茶や』と言って飲んでくれたという。だからもっと購入したいとのこと。元々、そう売れるとは思っていなかったため、とりあえず残っていたわずかなお茶を分けてあげたらしい。

確かに息子の私が言うのは身内贔屓だろうが、売っているもので我が家と同じ味のお茶には出会ったことがない。なんともいえない香りと渋みと甘み、、。また、飲んだ時の鼻に抜ける香りで、「ああ〜もうすぐ夏や〜。」と季節を感じたものだ。

しかし、母親も歳をとり、肝心のお茶の木も年々弱って数も少なくなってきた。我が家でも毎年数ヶ月分のお茶をつくることもなくなってきた。何年か前から何とか残していきたいと思い、私もお茶摘みから始めたが、不思議なことに、同じように作っていると思うのに、どうも母親の味を超えられない。香りと甘み、それが再現できない。茶葉の摘み方か?揉みかたか?手についた菌の違い?なんでか、、?

さて、今年はどうだろうか。もうしばらく待つこととしよう。

***おまけ***

やったことはなかったが、揉んだ茶葉をすぐに焙じて乾燥させて、お茶を入れてみた。やはり、まだ渋さと青臭さが残るが、独特の香りとわずかな甘みもあり。完成品が楽しみだ。


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