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シュトュットガルト モルダウを聴きに
今年は、チェコの作曲家スメタナの誕生から200年。
彼の誕生日に合わせ、3月から5月頃には各地でコンサートが開かれたのだが、予定が合わなかったり、チケットは既に完売していたり、、、
私は、もどかしい気持ちで過ごしていた。
そんな時、あるコンサートを見つけた。
それは、秋にシュトュットガルトで開かれるものだった。
コンサートにちょっと出掛けるにしては、シュトュットガルトは遠過ぎる距離だ。
しかし、どうしても今年中にスメタナのコンサートを訪れたくて、私はこの街に足を伸ばす事を決めた。
せっかくなので、前回訪れる事ができなかった市内の見どころにも足を運んでみた。
ルードヴィヒスブルク城
エーベルハルト・ルートヴィヒ公爵によって建設された、ドイツ最大のバロック宮殿。
元々この地には、1704年に狩猟のためのお城が築かれていたそう。
しかしその後、ヴェルサイユ宮殿をモデルにしたと言われるお城が建設される事になった。
一度も破壊された歴史のないこの建物は、庭も含めてとても豪華で見所の多い場所だ。
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内部はツアーにて見学可能だが、残念ながら写真撮影禁止のため、内部の写真は無し。
元々あった狩猟のための建物から見学がスタート。
1時間のツアーでは、400室以上もあるという部屋の中でも、特に見どころを案内して下さる。
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息を呑むような美しいバロック式天幕の間、教会、そして宮廷劇場では、ここを訪れたというモーツァルトの曲 アイネ・クライネ・ハナト・ムジークをバックミュージックにして、劇場の説明をして下さった。
訪れた時には、お城の庭でかぼちゃ祭りが行われており、また城内ではウェディングドレスを着てフォトシューティングしているかたがたもいらして、全体的に華やかな雰囲気だった。
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ポルシェ博物館
ドイツには有名な自動車メーカーが多く存在しているが、その一つがポルシェ。
残念ながら、制作工程を見学できるコースは、半年以上先まで予約がいっぱいだった。
建物も内部も、とにかくカッコ良いの一言に尽きる。
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レーシング体験や、フォトシューティングのコーナーは長蛇の列で、人気の高さを物語っている。
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メルセデス・ベンツ博物館
もう一つ、シュトュットガルトで忘れてはいけない博物館が、こちらのメルセデス・ベンツ博物館。
こちらへは二度目の訪問だったが、やはりこの博物館はとても面白い。
会社の歴史だけでなく、世界中の政治経済、芸能ニュースまでを年代毎に追い、メルセデス・ベンツがどのような役割を果たしてきたのかが分かる。
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古城と州立博物館
街の中心地にある古城は、州立博物館として利用されている。
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石器時代に遡り、ローマ時代、キリスト教が布教されてからの歴史を順を追いながら辿る事ができる。
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ゴーグルを装着し、バーチャル世界を体験できるコーナーもあり、とても面白かった。
見学時間は2時間ほどと説明があったが、とてもその時間内には見終える事ができないほど広く、見応えのある博物館だ。
閉館時間ギリギリまで粘ったが、全部見る事はできなかった。
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州立美術館
正直に申し上げると、ここへはほとんど前情報を調べずに出かけてしまった。
コンサートまで時間が余ったので、近くに美術館があるので立ち寄ってみようかというレベルだったので、こんなに素晴らしい美術館だとは想像もしていなかった。
シュトュットガルトといえば車の博物館が有名過ぎるせいか、私が検索した時にはあまり情報が出てこなかったようだ。
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美術館に入り、一番最初に飾られていたのが、モディリアーニの横たわる裸婦だったので、私はすっかり驚いてしまった。
ちょっと待って!このような作品は、美術館の奥の方に恭しく(少々勿体ぶって)置かれている物なのでは?と心の中でツッコミを入れてしまった。
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その先には、ピカソコレクションの大きな広間があり、また目玉が飛び出てしまった。
この美術館は、一体どんな美術館なの?
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慌てて美術館の歴史を調べてみると、元々あった王立絵画館を発展させようと、市民が立ち上げたものだそう。
競売で競り落とされた途端にシュレッダーにかけられたあのバンクシーの作品も、この美術館で展示された期間があったのだという。
素晴らしいコレクションだったので、せっかくなので美術館は別の記事に纏めたい。
コンサート
そして、待ちに待ったコンサート。
会場はベートーヴェンホール。
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1階から2階部分にかけ、曲線状に繋がるように造られた階段が目を引く美しいホールだ。
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プラハ ロイヤルフィルハーモニーによる演奏。
曲目は、スメタナの我が祖国より、モルダウ。
続いて、チャイコフスキーのピアノ協奏曲。
最後は、ドヴォルザークの新世界より。
どの曲も、何度も聴いてきたメロディーだ。
ピアノ協奏曲は、美しいピアノの調べと、オーケストラの旋律に聞き惚れる。
当たり前だが、家で聞くのとは全く違う。
遠くからでも、ピアノの上を走る指が見える。あんな風に弾けたら、、、と憧れの気持ちで見つめてしまう。
新世界は、今回のコンサートで一番感動した。
第二楽章『家路』の部分を聞くと、いつも中学校のキャンプファイアを思い出す。
大きな焚き火を囲んだ懐かしい思い出が脳裏をかすめ、私は目を閉じ音に集中する。
イングリッシュホルンの響きは、何と美しいのだろう。
そしてあの有名な第四楽章は、大きな会場ならではの迫力で、金管楽器の音を堪能する。
特にトランペットは、コンサート会場を震わせるほどの音の塊となり、私めがけてドーンとやってくる。その刺激で、私は何度も鳥肌が立ってしまった。
ドヴォルザークが表現したかったであろう大きな機関車が、目には見えずとも轟々とホールを駆け抜けて行くようだ。
そして、モルダウ。
この曲が演奏されるのは、たった13分。
この13分のために、最近は遅れる事が多いと分かりきっているドイツの特急電車を使い(ただ遅れるだけではなく、私が予約した電車は当日の朝キャンセルになり、慌てて別の電車を探した)往復8時間以上かけて、計700km移動することを決めた私。
馬鹿げているほどに無駄に思える事が、実は自分を深く、そして強く満足させる事がある。
どうしてもやりたい事があるなら、そこへ行くしかない!
私を突き動かすものが、そこにあるのだから。
あんなに感動した美術館も、車の博物館もスーパーカーの数々も、美しいお城も庭も、今回はオマケでしかない。
それにしても、何とまぁ贅沢なオマケだろう!
シュトュットガルトは、見どころが多い街だということだ。
美しく奏でられる音を聴きながら、私はまだ自分の目で見たことのないモルダウの流れを想像する。
私は一枚の木の葉になった気分で、音と共に川の流れを伝う。
小さなせせらぎは、やがて大きなうねりとなって、雄大に流れていく。
あぁ、これが聴きたかったのだ!
これが、今回の旅の原動力。
スメタナの生誕から200年。
スメタナが音楽を学んだ街、プラハ。
その街のフィルハーモニーの演奏を、今年のうちに聴けて本当に良かった。
こんなにも素敵な曲を残してくれたスメタナに、感謝したい。
この曲が作られたのは1879年。
1882年に6楽章全ての初演が行われた。
2032年には150周年となる。
その時が来たら、私はプラハの地でこの曲を、いや、我が祖国の全てを聴こう。
何度も予約し、いつもキャンセルせざるを得なかったプラハ旅行。
今度こそは必ず叶えてみせよう。
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