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北ドイツ旅行①ハンザの女王リューベック

以前ドイツの北海沿いを旅行した記事を書いたが、今回はバルト海方面を訪れた時の思い出を。

リューベックへは、遠い昔に一度だけ訪れたことがあるが、記憶が曖昧だったのでぜひもう一度訪れたかった。

リューベックの正式名称は、ハンザ都市リューベック。
ハンブルクと共にハンザ同盟の中心的役割を担った事、またその旧市街は世界遺産にも選ばれている(1987年)事などから、ハンザの女王、もしくはバルト海の女王などと呼ばれているそうだ。

リューベック駅

ホルステン門
駅から旧市街へ向かうと、ドーンと大きな門がお出迎えしてくれる。
リューベックのみならず、シュレースヴィッヒ・ホルスタイン州の象徴とも言える門。
街はかつて、東西南北の四つの門により守られており、今もこのホルステン門と、北のブルク門が残されている。
門の中央には、CONCORDIA DOMI FORIS PAX(内に結束、外に平和を)という文字が。

二つの塔は博物館になっており、街の歴史や中世の時代の街の様子、街と海運の繋がりなど、様々な展示品が見学できる。

どの街でもそれぞれのルールがあり、それを破った時の処罰も厳しい。

運河 トラヴェ川
旧市街はぐるりとトラヴェ川に囲まれており、かつては城壁が川沿いに建てられていたそうだ。
街を守るために、幾重にも防御をしていた事がうかがえる。

聖ペトリ教会
その歴史は13世紀に遡る。
1942年には空襲によって破壊されたものの、1966年に再建された。

中はほとんど空の状態なので特記する事はないのだが、エレベーターで塔に登る事ができる。
リューベックの街には7つの塔があり、その一つがこの聖ペトリ教会。
ここからの眺めが一番良いそうだ。
眼下には2つの塔を持つ聖マリア教会と、市庁舎広場。

ホルステン門とトラヴェ川が見渡せる

市庁舎
増築を繰り返して拡張した建物は、ルネッサンス 、ゴシック、ロココと、様々な時代の建築様式が混在している。
一番古い部分は、1230年に建てられた。
内部は、ガイド付きで見学することができる。

入り口右にある謁見ホール。
クリスタルのシャンデリア、ステファノ・トレッリによって描かれた壁の絵、大理石の床。
豪華なホールから、この街の豊かさが伝わってくる。

そして、入り口中央に設計された階段の間は、息を飲むほど素晴らしい。
漆黒に焼かれたタイルは、天井の明るいステンドグラスと対照的だ。

議会場
豪華な装飾が施された議会場。

議長席の前には、街の7つの塔が描かれている。
ガイドさんのお話によると、街にいくつも教会があるのは、宗教的な理由だけでなく、人々の身分や職業によって、訪れる教会が決まっていたからだそうだ。

赤の間
会議室として長年使われていた部屋と、革張りの椅子。
かつては、男性の嗜みの一つとしてモクモクと煙草を燻らせながら会議が行われていたそうだ。
そのため、修復前のこの部屋は、壁や天井、そして絵までもが、酷いタールだらけだったそう。

市庁舎内から見た広場と教会

廊下には、歴代市長や名誉市民の肖像画が掛けられており、その中にはトーマス・マンや第4代連邦首相ウィリー・ブランドも。

ついでに、市庁舎にあるRatzkellerというレストランで食事をした。

いただいたのは、北ドイツ名物のLabskaus。
お肉とマッシュポテトを混ぜたものに、目玉焼きが乗せられ、ニシンの酢漬けも添えられている。
このLabskaus、実は知り合いから散々な評価を耳にしていたのだが、案外美味しかった。

聖マリア教会
二つの塔を持つ教会。
北ドイツの特徴的なレンガゴシック建築。
市庁舎ガイドさんのお話によると、この教会は富裕層階級のための教会であり、リューベックの教会の中で特に豪華だという。

バッハのお気に入りだったという、世界最大級のパイプオルガン。
なんと、8512本のパイプが使われているそうだ。

死の舞踏
死の恐怖から、人々が半狂乱になり踊り続けたというお話。
このモチーフは、色々な教会で見られるが、リューベックもその一つ。
初期の頃は、布に描かれ壁に掛けられていたが、1700年頃に壁に描かれるようになった。
第二次世界大戦により、その壁は全て消失してしまったそうだが、現在はこのような形で再現されている。

ステンドグラスが素晴らしい。

教会の外にある大きな石と悪魔。
教会が建てられる際、ワイン酒場ができると勘違いした悪魔は、この工事に積極的に参加した。
工事が進むにつれ、これが教会だと分かった悪魔は、怒りに任せて近くにあった石を教会に投げつけようとした。
しかし、市民がワイン酒場を近くに作ると約束し、悪魔はその怒りを鎮めたそうだ。

なんとも可愛らしい表情

ブッデンブロークハウス博物館
トーマス・マンとその兄の祖父母の家。
残念ながら、改装中。

ウィリーブラントハウス
リューベック出身、第4代連邦首相ウィリー・ブラントの博物館。

ヤコビ教会
船乗りのための教会で、中には船の沈没で亡くなった方を弔う祭壇が設けられていた。

聖霊養老院
ヤコビ教会の反対側に位置する建物は、中世の病院。

ブルク門
ここは港が近いため、税関の役目も果たしていたそう。

Niederegger
リューベックといえば、マジパンが有名。
ドイツのどこにいても手に入るマジパンのお菓子の本店はここ。

ショーウィンドウは、リューベックの街をマジパンで見事に再現しており、芸術的だ。

Schiffergesellscgaft
かつてのギルドハウスの建物は、今はレストランとなっている。

天井から吊るされた様々な船の模型

ここでは、北ドイツの名物Pannfischをいただく。
色々なお魚で作られるそうだが、いただいたのは白身魚のパイク。
これがマスタードソースと合い、とても美味しかった。

デザートには、同じく北ドイツ名物のRote Grötzleを。
これは赤い実の果実、クロスグリや苺、さくらんぼなどを使ったゼリーのようなもの。
今まで食べた中で、断トツの美味しさだった。

おまけ
One-Fair trade coffee roaster
港町といえばコーヒー。
街を歩いていた時に偶然このお店を見つけ、フェアトレードと掲げられていた事もあり、中を覗かせて頂いた。
余談だが、修学旅行(のようなもの)でリューベックを訪れていた学生さんたちが、課題の一環として、フェアトレードについてお店のかたにお話を聞いているところだった。
お店のかたが、丁寧に説明をしていたのが印象的だった。

せっかくなので煎りたてのコーヒー豆と、街歩き用にコーヒーを一杯頂いた。
このお店を見つけたのは、まだ午前中だった。
煎ったばかりのコーヒー豆をエコバッグに入れて歩いていると、一日中ずっといい香りが漂ってきた。
私のリューベックの街の思い出は、こうしてコーヒーの香りに染まった。

リューベック滞在中、何度か突然雨に降られた。
突然降り出す雨は、北ドイツ特有なのか、夏特有なのか、もしくはその両方だろうか。
女性の機嫌のようにコロコロ変わるなぁと、こっそり笑ってしまった。

青い空に太陽が輝く街も素敵だが、雨に濡れている姿も、そして夜景までも、しっとりとしている。
その姿はそれぞれ、元気で華やかな女性、憂いのある女性、色っぽい女性のようであり、様々な顔を私に見せてくれた。
ハンザの女王リューベックは、どんな姿でも、どんな機嫌の時も、常に美しかった。


北海沿いの街の思い出

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