見出し画像

フェイラー ドイツの伝統工芸織物

ドイツのお土産

ドイツに遊びに来る友達が、お土産にしたいと言うものは大体似てくる。
食品ならばドイツビール、ドイツワイン、ソーセージ、チョコレートやHARIBOのグミ、Dallmayr ダルマイヤーのコーヒー。
化粧品では、Weleda ヴェレダ(スイスのブランドだが、ドイツでも非常に浸透している)や Kneipp クナイプ、Dr. Haushka ドクター・ハウシュカ、Niveaニベアも人気だ。
最近日本で販売が開始されたカエルのマークの洗剤Froschフロッシュを見て、日本との価格差に驚いた友達もいた。
刃物では、Zwillinge ツヴィリンゲ。
少し高級なお土産では、RIMOWAリモワのスーツケースや、Montblancモンブランの筆記用具、Meißen マイセンの陶器を気に入って買っていく人もいる。
その他には、ドイツの蓋の付いたビアマグや、Steif シュタイフのテディーベア、そしてフェイラーのタオルなど。

これだけ色々なものがあれば、お土産を選ぶのも楽しそうだ。
これらのリクエストがあった時に、一番困ったのが、実はフェイラーのタオルだった。
なぜなら、あまりドイツで見かけないからだ。以前、デュッセルドルフには三越さんが出店されていて、困った時にはそこに友達を連れて行っていた。

HPより

ドイツではあまり知名度のないフェイラーが、なぜ日本ではこんなに有名になったのだろうかと気になって調べたことがあったので、そのまとめと備忘録。

フェイラー社について

フェイラーの綴りは、Feiler。
ドイツ語でeiの綴りは、アイと発音するので、ドイツ語読みだとファイラーになる。
しかし、日本の公式サイトでもフェイラーと記載されているので、以後はフェイラーに統一して記載。

日本のフェイラー社のHPでは、会社の歴史をあまり知ることができなかったので、以下ドイツのフェイラー社のHPを参考に、会社の歴史についてのまとめ。

フェイラーとは、創業者の名前。
創業者Ernst Feiler エルンスト・フェイラーは1899年生まれで、ミンシュブルクの街で機織りを学んでいた。
1922年に初めて、その地方の伝統織物であるシュニール織りに出会ったそうだ。
シュニール織とは、少しモコモコとした触感の織物で、ドイツ・ババリヤ地方の伝統工芸。
ちなみにシュニールという言葉はフランス語から来ているそうで、その意味は「芋虫」。芋虫のふっくらとした感覚が、その織物を表しているそうだ。
織り上げるまでにたくさんの工程を経る、大変手の込んだ貴重な織物として有名だ。

1928年、ファイラー氏はLiebenstein リーベンシュタイン(現在のチェコ リバ)に、タオルとシュニール織りの工場を設立。
当時は15人の従業員しかいなかったが、その商品はアメリカにも輸出される程の人気があったという。

1948年、ファイラー氏はErnst Feiler & Co. Frottier- und Chenilleweberei という会社をHohenberg ホーエンベルクに設立。
1950年代からすでにフランクフルトの見本市へ出品しており、1960年代には巨額の設備投資をし、工場と従業員が拡大していく。

HPより

1970年代は、ファイラー氏の死去に伴い会社は大きく変革を遂げる。
後継者の娘Dagmar Schwedtダグマー シュヴェットが会社に入社した事が、今後の会社の方針を大きく変えたとも言える。彼女は国際市場への開拓に乗り出し、その開拓先がなんと日本であった。
株式会社モンリープMontrive Co. Ltd との提携が決定したのだ。

1980年代の不況下でも、フェイラー社は順調に経営を伸ばし、特に日本市場がその売上の一端を担っていたそうだ。

2000年代には、インターネットでの販売を開始。
日本だけでなく、ロシア、東欧での販売も軌道に乗り始める。
2012年に、フランクフルトにフラッグシップを開店し、ロゴを蝶に変更。
2019年からは、ブランドイメージキャラクターに、テニス選手のグラフ・シュテファニーを起用。

現在、世界中で販売されている商品は、全てホーエンベルクの街で生産されている。
ドイツ国内の販売店舗は、フランクフルトと、工場に隣接した場所の2か所のみ。

ドイツの一企業の成長を支えたのが、日本市場だったという事を知り、私はとても驚いたと同時に、日本での人気の秘密が理解できた気がした。
日本人の好みに合わせた販売をしてきた企業努力が、今の地位を築いているとも言えるのだろう。
私はこんな風に、日本とドイツの繋がりを知る事がとても嬉しい。

日本国内の展開を追いかけると、2004年に株式会社モンリープは住友商事グループとなった後、2012年には商号を変え、住商ブランドマネジメントとなる。
2018年に、住友商事の100%子会社であるフェイラージャパンが、その事業を継承しているそうだ。

HPを見ていた時、グリム童話シリーズのハンカチを見つけた。
私はその頃、ちょうどフランクフルト方面を訪れる予定があり、その理由の一つがグリム童話白雪姫にまつわるお城を訪ねる事だった。
そのため、ぜひお店を訪れてハンカチを買おうと決めた。

フラッグショップを訪れる

フェイラーのフラッグシップは、シラー通りという高級ショッピング街の一角にある。

お店の内部は、見たこともない量のフェイラー商品が、整然と飾られていた。
フェイラー独特の柔らかい肌触りと、色使い。
店内にはすでに日本人観光客のかたがいらっしゃり、店員さんも日本人のかただった。
店内の撮影についてお聞きすると快諾してくださったので、こちらに何枚か掲載。

高温多湿な日本と比べて、ドイツでは汗をかくという事が少ないせいか、ハンカチを持つ人を見たことがない。
ティッシュペーパーが日本の物よりもかなり厚手なため、こちらを多用する。
小学生の頃、ハンカチとティッシュを持ったかどうか毎日確認していたのを思い出すと、その習慣の違いは大きい。

ハンカチを持たないドイツで、このような高級ハンカチの需要は、限りなく少ないのではないかと思う。
もちろん、ハンカチだけでなく、大きめのタオル、バスローブ、バッグ、クッションなどの小物も販売されているが、日本のような大きな需要はないのではないだろうか。
日本では多くの百貨店でフェイラーを見かけ、特に女性であればより身近な存在であると思う。
正直なところ、一昔前はフェイラーといえば少しお年を召したかたが好んで使われているイメージがあったのだが、日本では今Loverary by Feilerという店舗も展開されているほど、年齢を問わずフェイラーファンのかたが多くいらっしゃるようだ。
雑誌の付録としてフェイラーとコラボした商品が販売される事も頻繁にあり、更にそれが目的で雑誌を買う方も多いと聞く。
例えば、最近であれば2021年12月にInRedという雑誌でポンプ2個セット、同月増刊ではトレー2枚組、2021年冬号のたまごクラブでは母子手帳ポーチ、今年1月には美人百科でペコちゃん保冷バッグなど。
付録だけが、後日メルカリなどで販売されるほど人気だそうだ。
日本での展開は、確実にドイツより消費者向けに浸透している。

この美しい伝統工芸織物は、ドイツで生まれ、日本で愛され大きく育てられ、今ここにあるのだと思うと大変興味深かった。

この柔らかなハンカチを手にする度に、私は白雪姫のお城を訪れた思い出と、そしてフェイラーと日本との関わりを思い出す事だろう。

白雪姫のお城を訪れた時のお話はこちらにて。



いいなと思ったら応援しよう!