北ドイツ③ドイツ海軍の街ヴィルヘルムスハーフェン
北海沿岸の街ホークジールから、日帰りでヴィルヘルムスハーフェンWilhelmshavenに出かけた。
ホ―クジールよりもだいぶ大きく、見どころ一杯の街だ。
観光の前に、この街の歴史について。
ヴィルヘルムスハーフェンという街の名前は、7代目プロイセン王でもあり、後に初のドイツ皇帝になったヴィルヘルム1世 Kaiser Wilhalm Iが名付けたのだそうだ。
通常、ドイツ語の『港』はHafenと書くのだが、この街の名前はHavenと書かれる。
これは、低ドイツ語Niederdeutschで使われる綴りを使っているそうだ。
標準ドイツ語Hochdeutschに対し、低ドイツ語Niederdeutschと呼ばれているもので、このNieder(低い)というのは、地理的なものを表しており、北部を指すという。
自分自身の名前を付けるとは、随分な自信家のようだなと感じたのだが、全く違う一面もあるようだ。
彼は、プロイセン王である事に随分とこだわりがあったそうなのだ。
そのため、ドイツ皇帝にならざるを得なかったった時に、なんと号泣してしまったという有名なエピソードがある。
鉄血と言われるビスマルクに押された形で、皇帝になるしかなかったというのだが、少し可哀想な気もする。
しかし彼は、ヴェルサイユ宮殿の鏡の間で、皇帝としての戴冠式を行っている。
普仏戦争の勝利を見せつけるかのような行為を見ると、やはり彼は自信家なのだろうか。
パリの人々の腸が煮えくり返っている様子を、まざまざと思い浮かべることができる。
これは1871年1月18日の事で、同時にドイツ統一建国の宣言をした。
蛇足だが、ドイツ統一というのは、この1871年の事を指すので、ベルリンの壁崩壊時期の統一については、正確には、ドイツ再統一 Deutsche Wiedervereinigung と呼ばれている。
港の歴史は、その名前よりももっと古く、1853年にプロイセンがオルデンブルク大公国から50万タラーで購入した事が始まりだそうだ。
プロイセンは、北海に強靭な海軍港を建設したかったそうで、まさにこの地はうってつけの場所だったという。
はて、50万タラーとは、一体どのくらいの価値なのだろう?
私はいつも、こういう事が気になって仕方ない。
ドイツ連邦議会が発行している通貨の現在価値評価リストを見てみたところ、1853年時点の1タラーは、現在の価値に換算すると、30.9ユーロだそうだ。
つまり、500,000タラーは、15,450,000ユーロ。
円換算してみたところ、22億6千万円くらいになった。(1ユーロ=146,29円にて計算)
そして正しい価値が分かっても、一つの地域を買うとなると、果たしてどのくらいの値段が適当であるのか、結局全く想像がつかなかった。
海軍港としてスタートを切ったこの場所は、次第に海兵達のための住居、ホテルなどが建設され、街が出来上がった。
20世紀に入りその近代化は急速になってきたらしいが、その建設にはヒットラーも深く関わってきたという。
第二次世界大戦中には、なんと街の60%が破壊され、4万人が失業していたという。
そんな中でも、海軍基地はほとんど被害がなかったようだ。
戦後はロシアによって、その建物も街も海に沈められてしまう予定だったそうだが、連邦共和国がNATOに参加したことによって、その被害は免れた。
現在、ヴィルヘルムスハーフェンは、新しい施設が建設され、ドイツで一番大きな海軍施設としてその名を誇っている。
ここからは、街を訪れた時の様子を。
① ドイツ海軍博物館 Deutsches Marinemuseum
この街のメインでもあり、ドイツ海軍の歴史に触れられる場所だ。
博物館の外に停泊している船やUボードは、船の内部まで見学できる。
船員達が、どのような暮らしをしていたのかも再現されている。
下部写真の左側に少し見えるのは、この街のランドマークでもあるカイザーヴィルヘルム橋。
パートナーは、操縦席の椅子に座りキャプテンになった気分で、ご満悦の様子。
Uボードの内部も、もちろん見学可能だ。
関連サイトはこちらより。
② 水族館
私は水族館が大好きなので、水族館に行けると分かった時から、ウキウキしてしまう。
https://aquarium-wilhelmshaven.de/
③世界遺産 ワッデン海ビジターセンター Wattenmeer Besucherzentrum
こちらは、干潟に生息する動植物や、近海の海に住む動物の説明などがある。
見たこともない種類の鳥の剥製が、ズラリと並んでいた。
実は、この場所を訪れる予定はなかったのだが、海軍博物館の反対側にあり、気になって足を運んでみたのだが、とても面白かった。
ワッデン海の事を知りたければ、こちらに立ち寄ってから出かけるのがお勧めだ。
入口に飾ってある大きな骨格標本に驚く。
立て続けに博物館を訪れた一日。
知りたい病の私は、これは何だろう?なぜ?と、パートナーに聞いたり、意見を求めてばかりいた。
そんな私に、パートナーが唐突に話しかけてきた。
『僕は、Ditoのアレクサみたいだね』と。
アレクサとは、あのアマゾンのAIアシスタントだ。
私は、思わず吹き出してしまった。
私は『アレクサ以上だよ』と答える。
『アレクサは、ハグをしないからね』とパートナーが言う。
そして、腕を一旦大きく伸ばしてから、ゆっくりとハグをしてくれた。
少し照れた。