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ルール地方のローテンブルク モンシャウ

モンシャウの街は、ベルギー国境沿い、アイフェル国立公園一帯の中にある。
中世の街並を残すこの街は、ルール地方のローテンブルク、またはアイフェルの真珠などと呼ばれ、特に日帰り旅行先としてドイツ人に人気の街だ。

シャイブラー家Familie Scheibler 18世紀布織産業の繁栄

16世紀に始まり、18世紀代にはここモンシャウだけでなく、ミラノに至るまで、布織業界でその名前は広く知れ渡っていたそうだ。
街の中心に今も残る赤い家と呼ばれる大きなお屋敷は、このシャイブラー家の邸宅&オフィスとして1752年に建てられ、今は博物館となっている。

街の中心にあるマルクト広場では、街の歴史を伝える布織職人の噴水を見つけた。
18世紀の布織職人の仕事は、大変厳しいものだったようで、その様子がここに示されていた。
スペインから輸入された羊毛は入念に洗浄され、一部はこの時点で染色される。羊毛から糸を紡ぎ、布が織られ、更に布を染色するという工程を経て、乾燥される。
次は、布の表面を滑らかにするために、カード(梳綿)が行われ、最後に大きな鋏を使って、ミリメーター単位で余分な繊維を切り取る。
この鋏職人の仕事が一番注意や労力が必要であり、かつ一つの織物に一週間ほどかかったため、布織職人の中で一番賃金が高かったそうだ。

それにしても、こんなに大きな鋏を初めて見た。
そして、布織といえばスペインやオランダ(フランドル地方)や、アントワープ市場のイメージが強かったので、このルール地方にもこのような有名な布織の街があったことを知り、とても勉強になった。

このような厳しい仕事に携わっていた布織職人らのお陰で、この街やこの地域が発展し、多くの富が築かれた事が分かると、こうして街の中心に飾られている事も納得できる。

マルクト広場

ここは、360度見渡す限り木組みの家が建ち並び、まるで中世にタイムトリップしたような気分になる。
優しい流れのルーア川沿いにも、木組みの家が綺麗に並び、街一番の絶景スポットとして人気だ。
小さな路地に入っても、どこを歩いても木組みの家ばかり。
これは、ローテンブルクよりも木組みの家が多いかもしれないと思ったほどだ。

モンシャウ城 Burg Monschau

お城まではいくつかのルートがあるようだが、高台に向かって進めばこのお城に繋がり、最後はこのような階段となっていた。

目印はこの丸い塔

モンシャウ城跡地は、今はなんとユースホステルとして使われているようだ。
とても眺めの素晴らしい場所なので、きっと人気だろう。

ハラ―要塞 Haller Ruine

13世紀頃まで、要塞として使われていた場所。
高台から眺める旧市街は、まるで絵葉書のような美しさで、思わずため息が出た。
先程までいたお城も、街の美しさを一層際立てている。

街散策の楽しみ カフェ巡り

小さなこの街には、たくさんのカフェやレストランがあり、みなゆっくりとしたひと時をこの街で過ごしている。
人気のカフェも何軒かあるようだが、2018年にドイツのベストパティスリーに選ばれたというCafé Kaulardを訪れてみた。
卵リキュールのケーキを頂いた。

このカフェの前に布織職人の噴水がある

お土産はマスタード

この街で人気のおみやげはマスタードだという事くらいしか知らなかったのだが、お城に向かう道を歩いていたら、たまたまマスタード専門店を見つけた。
お店には、なんと22種類のマスタードが!
思わず、そんなに多いの?選べないなぁ、と呟いてしまったら、お店のかたが親切に説明をしてくださった。
店頭で試食もさせていただき、オリジナルと、オレンジ、そして無花果のマスタードを購入。

9ユーロチケットを活用

モンシャウは、ドイツ人で知らない人はいないくらい有名な街。しかし、交通の便があまり良くなくて、なかなか出かける機会がなかった。

今、ドイツでは9ユーロチケットというものが販売されており、1か月9ユーロでドイツ国内の電車やバスといった公共交通機関が乗り放題だ。(ICEなど特急電車一部は除外)
これは、環境保護の観点や燃料高騰から国民を救済するという名目でドイツ政府が決定したもので、6月から8月までの3か月間施行される。
私が持っている通勤定期券も、通常ならば1か月80ユーロほどかかるのだが、9ユーロに自動値下げされている。

コロナ規制が緩和したこともあり、どこかにお出かけしたいと思うのは私だけではないようで、週末の電車やバスはいつも超満員。
それでもお出かけしたくなるのは、太陽が燦燦と輝くこの季節ならではだろうか。

私はこのチケットを使い、このモンシャウの街を訪れることにした。電車とバスを乗り継ぐ遠出でも、馬や牛が草を食む景色の中の移動は目に心地良く、全く苦にならなかった。
お天気にも恵まれ、久しぶりの遠出という心理的理由も重なり、街は真珠よりも輝いているようにすら感じた。
同じ州内にこんなに素敵な街があるのに、今まで訪れなかったとは、なんて勿体ない事をしていたのだろう。

明日から、このNRW州は夏休みに入る。
この2年は行動に制限が多く、お出かけを控えていた人が大半だろう。
アフターコロナとは言えずとも、規制が緩和された生活に戻り、夏休みを楽しみにし、お出かけの予定を立てている事だろう。
私もこの夏休みを、いつも以上に楽しみにしている。

さぁ、7月と8月は、このチケットを使ってどの街を訪れようか。
私の大好きな国、ドイツ。
まだまだ知らないドイツの街を、もっと知りたい。

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