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南ドイツ一人旅③妖精の城リヒテンシュタイン城

Lichtenstein リヒテンシュタイン
アルプシュタットから、北東へ30km。
リヒテンシュタイン侯国でもなく、ザクセン州にある街リヒテンシュタインでもない。
バーデン・ヴュルテンブルクにも、リヒテンシュタインと名付けられた自治体区域がある。

文献によると、この土地には昔から、リヒテンシュタイン家の持つお城があったようだ。
後にこのリヒテンシュタイン家は、ハプスブルク家に仕える。
その後、相続や結婚、土地の売買などが繰り返され、今のリヒテンシュタイン侯国が出来上がったようだ。

先日記事をアップしたジグマリンゲン城も崖上の城だが、山頂の断崖絶壁に建てられたリヒテンシュタイン城は、まるでCGの映像のように神秘的。
圧倒的な美しさで見る者の心を奪い、その美しい姿は、妖精に喩えられている。

私は長いこと、このお城を訪ねてみたかった。
しかし塔の修復時期などがあり、行きたいと思った時にタイミングが合わず、訪れていなかった。
今回、ホーエンツォレルン城の訪問と共に、このお城を選んだのは、当然の成り行きとも言える。

お城の歴史を読んでみると、お城の元々の建物は1390年頃に建てられ、中世では最も要塞化された城の一つに数えられ、あらゆる攻撃に耐えたそうだ。
この断崖絶壁が、自然の要塞の役割を果たしたのだろう。

初期のお城の様子

しかし、1567年に公爵の居城としての地位を失うと荒廃し、1802年には城の基礎部分まで取り壊されてしまったという。

ヴィルヘルム・フォン・ヴュルテンベルク伯爵は、1837年に従兄弟のヴィルヘルム・フォン・ヴュルテンベルク王から、このお城と近隣の土地を譲り受けた。
ヴィルヘルム・ハウフの小説『リヒテンシュタイン』に触発された伯爵は、建築家ハイデロフに、古い城の基礎の上に複合城郭を建てさせた。

建設は1840年に始まり、42年に終わった。
こうして、中世風のドイツ騎士の城が建設されたそうだ。
現在の所有者は、この伯爵のひ孫にあたる方。

お城は庭のみか、城内入場のどちらかを選択できる。

場内の敷地には、整えられた庭や塔、武器庫、チャペルなどがある。

そして、ある地点からの眺めが、非常に素晴らしいのだ。

この写真を撮っているのは、この突き出た岩の上の展望台から。
岩の上に、人が小さく見えるのがお分かり頂けるだろうか。

ここから見ると、山の上、しかも岩壁に建っているのが良く分かる。

いよいよ、お城の中へ。
空中に浮かぶように見える架け橋は、少しばかり怖い。

別の角度から

お城の内部は撮影禁止のため、中庭のみ。

最初に通される部屋には、中世の騎士への憧れから、甲冑や銃などの武器コレクションが飾られている。
中には、なんと日本の鎧兜も飾られており、親近感が湧いてしまった。

その奥にあるチャペルには、デューラーの師と言われるミヒャエル・ヴォルゲムートの2枚の絵も飾られていた。

ここは夏の離宮。
一年のうち短い間しか使われていないものの、各部屋は見事な造りで、特に王の間の装飾は素晴らしい。
驚いたのは、戦争で砲撃を受けた時の銃痕が、王の間に残っていたことだ。

パーティーやゲストを招いた食事をする部屋は、お城の中では一番大きいものの、オーケストラを配置する場所が無い。
そのため、二階部分に隠し部屋のような空間を造り、そこにオーケストラを配置して音楽を奏でさせたという。

お城見学後には、元々のお城があった廃墟にも足を運んでみた。
お城からは、歩いて数分の場所にある。
麓を見渡せる、静かで眺めの良い場所だ。

ドナウ川沿いに建つジグマリンゲン城も美しいが、山の岩場の上に建つこのお城は、まるで想像の世界のよう。
そして、新しく修復されたばかりの塔は、真っ白で際立っている。

その姿は、何故か私に、平成の大修理を終えた姫路城を思い出させた。
白過ぎると批判されたという、あの姫路城だ。
私は桜の時期に、ちょうど修復を終えたばかりの姫路城を訪れた。
桜の淡いピンクと、真っ白なお城のコントラストは、まるでCGのようだった。
全く違う二つのお城だというのに、私はその色の白さから、二つのお城を連想していた。

リヒテンシュタイン城は、その足元にある白い岩肌が、フワリと裾の広がった白いウェディングドレスに見えてくる。
白い塔は、スッと首を伸ばしたようで、姿勢良く凛としている。
それと比較すると、例えば姫路城は、白無垢に角隠しを被った姿とも言えるだろうか。
和と洋、双方の美しい花嫁たち。

妖精の城、リヒテンシュタイン城。
それは、私にとっては妖精ではなく、美しい花嫁の姿をしていた。
岩壁に建つ姿は、その花嫁をしっかり守ってあげたくなるような、不思議な気持ちにさせられた。
一瞬にして心が掴まれるというのは、このような状態を指すのだろうか。
どうやら私は、この花嫁に一目惚れをしたようだ。

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