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オランダへ小旅行① アーネムで二人乗り自転車

ここからベルリンに電車で行くならば、高速電車で5時間以上。
ミュンヘンまでも、同じく5時間以上。

でも、オランダ国境の街までは、ローカル電車で1時間もあれば着いてしまう。

デュッセルドルフは、ドイツの西に位置し、オランダやベルギーに近い。
その中でもアーネムは、私が持っている通勤定期券があれば、週末はなんと無料でお出かけできてしまうほどの身近な存在だ。

Armhem  オランダ語 アーネム
Ahnheim  ドイツ語 アーンハイム

1つの街に、オランダ語とドイツ語の読み方があるのが、国境沿いの街ならではだと思う。
そんな国境の街アーネムと、その隣街ナイメーヘン(Nijmegen)にお出かけした時の旅行記。


オランダと言えば、アムステルダムや、デン・ハーグ、もしくはチューリップで有名なキューケンホフなど、観光地がたくさんある。

私はこの小さな街、アーネムについては、ゴッホの「夜のカフェテラス」がある美術館(クレラー・ミュラー美術館)に近い場所という、いかにも曖昧な認識でしか記憶になかった。

ドイツ人の小旅行の行先に度々この地方が挙げられることに、訪れてからようやく納得した。

アーネムは自然に囲まれた緑多い街だ。
動物園や野外博物館、そしてたくさんの公園がある。

街の中心には聖エウセビウス教会があり、近くはショッピング通りになっていて、とても賑わっている。
ここにあるガラス張りの展望台に行きたかったのだが、生憎工事中で教会自体にも入ることができなかったのが残念だ。

ちょうど時計上部がガラスの展望台となっており、肝試しにここに来る人も多いとか。

お天気に恵まれた日だった。
この教会近くの通りの角にあるアイスカフェでアイスを買い、目の前の広場で食べていた時、ふと建物に掲げられた広場名を見つける。

オードリー・ヘプバーン広場

私はオードリー・ヘプバーンとこの街の繋がりを、全く知らなかった。
急いでGoogle先生に聞いてみる。
オードリー・ヘプバーンは、第二次世界大戦中、ドイツの占領下にあったここアーネムに住んでいたのだそうだ。

私は、ローマの休日に惹かれ、今もお気に入りのDVDとして手元にある。
まるで猫のように真ん丸な目がコロコロと動き、可愛らしい表情をする彼女に憧れた。

いつかは、映画のシーンに出てきた場所を、全部訪れてみたい。

そんな幼い頃からの夢は、大学生の時にようやく叶った。
まだスペイン階段での飲食が禁止されていない頃、私は映画のシーンのように階段に腰掛けてアイスを食べた。

またアイスを食べながら、別の街で彼女を思うなんて、偶然といえども驚いた。

この街で一番行きたかった場所、それがジョン・フロスト橋。(John Frost Bridge)
第二次世界大戦中の、ドイツとイギリスの戦いの場所だ。
イギリス軍がパラシュートで降下し、この橋の占領を試みた。


橋の近くには記念碑も。

橋を向こう岸まで渡ってみる。

ライン川を渡りながら、どれほどの数のパラシュート部隊が空から降ってきたのかと想像する。
街が徹底的に破壊され、しばらくは人々が住むことができない程だったそうだ。

今こうして、緑あふれる街に再生しているアーネム。
この森や自然の価値が、より一層大切なものに思えてくる。

公園は、市民の憩いの場だ。

そして、もう一つの旅の楽しみが、クレラー・ミュラー美術館。

自転車が好きな私達は、ぜひオランダでも自転車に乗りたいと思っていた。
そして、美術館までの自転車ツアーを計画した。

自分達の自転車を持って行くのではなく、せっかくなら向こうに着いてから二人乗り自転車を借りてみないか?というのがパートナーからの提案だった。
それはいいアイデアだと、私がすぐに賛成したのは言うまでもない。

自転車屋の年配のおじさまは、君達のために新しいサドルに変えておいたんだよ、と嬉しそうに自転車を見せてくれた。
二人乗り自転車にはコツがいるからね、と乗り方のレクチャーもしてくださった。

二人で気持ちを一つにするんだ。

その言葉を何度も繰り返していた。

予約をした時に、ピクニックができるように昼食のサービスしたいこと、そして昼食には何が希望かを聞いてくださっていた。
ほんの気持ちのサービスだから、という言葉を信じて、私達は他にも食べ物を準備してしまっていたのだが、すぐに後悔した。
ワインやパン、オリーブに果物まで、しっかりした昼食を準備して下さっていた。
このサービスには、本当に驚いてしまった。
(自転車に乗ることが分かっているのにワインというのは、すごいなと思ったのだが)

私達は、たくさんの昼食やお菓子を自転車の籠とリュックサックに詰め込み、クレラー・ミュラー美術館へと出発した。

これが、私達の借りた二人乗り自転車。

クレラー・ミュラー美術館は、デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内にある。
ここはアーネムのお隣の街、オッテルローだ。
アーネムからは、片道約20km。
慣れない二人乗りの自転車にワクワクし、緑の中を駆け抜けるのが気持ち良かった。

公園は広大な敷地で、敷地内用に自転車が貸し出しされているほどだ。
この敷地内に入ってから、美術館までの道のりが更に10Km。
いかに広大か、想像できるだろう。

つまり、アーネムの街から美術館までの走行距離は、合計で片道30kmとなる。

二人乗り自転車はオランダでも珍しいらしく、私達を見て、ほら見て!と声が上がる。
公園の敷地内でピクニックをし、おじさまの用意して下さった昼食をいただく。
体を動かした分のエネルギーを、しっかり補給する。

公園内は、オランダの自然そのままを残しており、動物観察などもできる。
色々な場所で休憩をし、自然を観察し、そしてまた自転車で前進する。

何とも贅沢な一日の過ごし方だ。

ブログ内では美術館としての記事で保存したいため、美術館の詳細は別のブログに内容を記載する。

人の少ない静かな美術館で、思う存分絵を楽しんだ後、私は記念にミッフィーのぬいぐるみを買った。
ミッフィーの作者ディック・ブルーナー氏は、オランダのユトレヒト出身だ。
少し子供じみているかもしれないが、美術館に置いてあったミッフィーが、とても可愛らしかったのだ。
それは、ゴッホの作品「さくら」をプリントした洋服を着ている。

こうして私達は、ようやく帰路に着いた。

二人で乗っている自転車は、まるで私達の人生のようだと思う。

誰かにおんぶに抱っこされるのではない。
一方が一方を背負うのでもなく、私達は一緒に人生を歩んでいる。

ここまでの道のりは厳しく、そして私達は今もなお、人生の大きな遠回りをしている途中かもしれない。
それでも私は、この自転車に乗り続けようと思う。

走りながら、自転車屋のおじさまの声を思い出す。

心を一つにするんだよ。

私は少しだけ、ペダルを漕ぐ足に力を込めた。

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