ともぐい
直木賞受賞作『ともぐい』読了しました。
北海道の作者さんということで、文庫化を待たずに購入。1か月積んでましたが、本日午後いっぱいかけて一気に読みました。贅沢な休日でした。
ぐいぐい読めてしまう。熊との対峙のシーンは圧巻でした。息遣いや温度が伝わってくるようで、引き込まれました。
人間と動物の境目、そして生と死の境目は実に曖昧で、簡単に踏み越えられるものだということ。
熊爪は、野生の動物に近い人間だけれど、あくまでも人間。人間になりきれない人間。
でも陽子も人間らしいとは言えない気がする。
じゃあ、人間らしい人間ってなんだと言われると、首を傾げてしまう。
どこかしら欠けている半端同士で補い合って生きているのが人間で、意識するしないに関わらず、社会の構成員として助けたり助けられたりしている。それは時に面倒だけれど、人間として生きるためには、人間社会の煩わしさを受け入れる必要がある。
熊爪はもう一息だった気がするんだけどな。そのもう一息を、陽子はもう待てなかったのか。
いや、でもそもそも熊爪が人間らしくなる必要があるのか。野生の動物然として、自然に還っていったのは本望だった気もする。
陽子にしても、一体どうなることを望んでいたのか。熊爪と子どもと人間らしく生きたかったんじゃないのか。熊爪を殺したことは本意だったのか。
きっと正解なんてなくて、どの道を選んだとしても後悔があって、苦しんだりもがいたりして、そして誰も彼もいずれ消えていく。
再読すると、また気付くことがたくさんありそうです。
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