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0番『愚者の旅』

晴れ師みぃみです✨

自己紹介はこちらに♪


今回は、
タロットカードの絵柄から物語を作ったら、もっともっとタロットカードに親しみを持っていただけるのかなと思い、エンタメの一つとして創作の短編小説を書いてみました。
AIを組み合わせて、楽しく読めるように工夫しました!

少しずつ、シリーズ化していけたらなと思います♪

まずは、大アルカナ0番の愚者の物語を作りましたので、お楽しみくださいo(^▽^)o

それでは、はじまりはじまり♪


0番『愚者の旅』

——ライダー版タロット「愚者」の物語——


プロローグ——始まりの風

1.閉ざされた家

少年は、名を持たなかった。

父は彼を 「愚者」 と呼んだ。

生まれた時からそうだった。父は彼を一度も名前で呼ばなかったし、兄弟もいない。母だけが、彼を 「お前」 と優しく呼んだ。

愚者は、屋敷の中で育った。

それは大きな家だった。高い塀に囲まれ、庭には整えられた花々が咲いていた。部屋は広く、天井は高い。けれども、その家には 窓が少なかった。

「家の外には、危険がある。」

父はいつもそう言った。

「商人や旅人は嘘をつく。外の世界は混乱している。お前はここで、賢く生きるべきだ。」

愚者の生活は、決められていた。

朝、決まった時間に起きる。
決まった服を着る。
決まった食事をとる。

食事の間も、会話は少ない。
母は静かに微笑むだけで、父は本を読みながら短く言葉を投げる。

「姿勢を正せ。」

「口を閉じて食べろ。」

「無駄なことを考えるな。」

愚者は黙って頷く。
けれども、彼の心は常に 外の世界 を見ていた。

2.小さな冒険

屋敷の中では、決められたこと以外、何もしてはいけなかった。

けれども、愚者は 屋敷の外が気になって仕方なかった。

ある日、愚者は初めて”冒険”をした。

彼は母の隙を見て、使用人の荷車の後ろにこっそりと乗り込んだ。
荷車は庭の門を出て、石畳の道をゆっくりと進んでいく。

「おぉ……!」

愚者は 初めて、屋敷の外の景色を見た。

人々が道を行き交う。
市場では、色とりどりの果物が並び、商人が声を張り上げる。
犬が駆け回り、子供たちが笑いながら遊んでいる。

自由な世界。

「ここが……外の世界……!」

心が踊る。

しかし、すぐに見つかった。

荷車を降りた瞬間、父の手が彼の襟を掴んだ。

「何をしている。」

鉄のように冷たい声。

その日、彼は生まれて初めて、屋敷の奥の書斎に呼ばれた。

3.父の教え

父は書斎の机に座り、愚者を見下ろしていた。

「愚か者が。」

愚者は何も言えず、ただ立っていた。

「お前には、何が必要か分かっていない。」

父は厳しい目を向ける。

「世界は決まっている。強い者が上に立ち、弱い者は従う。それが秩序だ。」

愚者は口を開きかけたが、言葉を飲み込んだ。

「秩序を守る者は、愚か者にはならない。」

父の声は冷たかった。

「お前は、愚か者になりたいのか。」

「……違う。」

「ならば、私の言うことを聞け。」

その日から、愚者はさらに厳しく監視されるようになった。

4.母の優しさ

唯一の救いは、母の存在だった。

父の目がない時、母はそっと彼の髪を撫でた。

「お前の心は、外にあるのね。」

「……うん。」

「でも、父はそれを認めない。」

愚者は小さく頷いた。

母は微笑んだ。

「人は、それぞれ違う。父は秩序を愛しているけれど、お前は風を愛している。」

愚者は母の言葉を静かに聞いた。

「お前は、お前の心のままに生きなさい。」

母はそう言った。

しかし、それは父の目の前では決して言えない言葉だった。

5.決意の夜

愚者は決めた。

この屋敷を出よう。

窓の外を見つめながら、彼は心の中で誓った。

ここにいる限り、自由にはなれない。

外の世界には、まだ見ぬ景色が広がっている。

「僕は、そこへ行く。」

彼は部屋の片隅に、小さな袋を準備した。

少しの食べ物、革ひも、そして母からもらった布の切れ端。
それを棒に吊るし、肩に担ぐ。

夜明け前、彼はそっと屋敷を抜け出した。

冷たい空気が肌を刺す。

しかし、胸は不思議なほど軽かった。

「さあ、旅に出よう。」

足元には、まだ誰も踏みしめたことのない 新しい道 が続いていた。

第一章——出発

1.夜明け前の決意

夜は深く静かだった。
星々が瞬き、冷たい風が草原を撫でていく。屋敷の影は黒く、大きく、まるで檻のように見えた。
愚者は小さな袋を肩に担ぎ、足元を確かめるように歩き出した。

「もう、戻ることはない。」

胸の奥に、小さな震えがあった。恐れではなく、興奮だった。
外の世界は広い。何が待っているかは分からない。
だが、それこそが旅の醍醐味だった。
夜の静寂の中、彼は足を踏み出した。
自由への第一歩。

2.屋敷の最後の影

門を抜けようとしたその時——

「……どこへ行く?」

低く響く声に、足が止まる。
振り向くと、父がそこに立っていた。
影のように静かに、しかし確かに彼を見つめていた。

「僕は……旅に出る。」

愚者はまっすぐに答えた。
父はしばらく沈黙した後、短く言った。

「ならば、二度と戻るな。」

彼は、驚くほどあっさりと言い放った。
愚者は最後に屋敷を見上げた。
この場所に、自分の居場所はない。

「じゃあ、行ってくるよ。」

愚者は、振り返らなかった。
そして、扉の向こうへと進んだ。

3.最初の朝焼け

丘の上に立つと、空が赤く染まっていた。
太陽が昇る。
夜の冷たさを引きずった風が、ゆっくりと温かさを帯び始めていた。
彼は深く息を吸った。

「……これが、自由か。」

何も決められていない世界。どこへ行くのも、何をするのも、すべては自分次第。
胸の奥に、期待と少しの不安が渦巻いていた。
彼は一歩を踏み出す。
そして、歩き始めた。

4.森の出会い

草の匂いが濃くなった頃、森の入り口にたどり着いた。
葉の間から朝の光が差し込み、鳥の声が響いていた。
静かで、美しく、そして少しばかり神秘的な場所。
その時——

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