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第10話 2人の関係、ワタシの立場
『あ~…ワタシ、アニの嫁じゃないんですよ〜』
何度、この台詞を言っただろうか。
ワタシが『アニの嫁』ではなく、
『実弟の嫁』だと分かった時、
ほぼ100%の確率で相手の方は仰天する。
驚く、なんてもんじゃない。
『えぇーー!ウソでしょっ!?え?なんで〜!?』
…なんで?と言われましてもね。
相手からすると、
『アニ』と言うからには『実妹』ならまだしも、
『義理の妹』『他所の嫁はん』が何で!?
しかも相手は『あの(態度の悪い)ヒト』である。
『いやいやいやいや。自分のダンナでもやれるかどうかビミョーやのに、あのおうへ…いや気難しそうな、あのヒトやろ?……はぁ~……ビックリ。』
…となるらしい。
最初にも書いたが、
『ほぼ勢いだけ』で飛んで来たので、
あまり深く考えた事はなかった。
今思うと、自分でも本当『ようやるわ』である。
ここでの私の立場は
『スポークスマン』
『お女中』
『ウーバー』
だった。
スポークスマン
『先生は!オレに!聞いてらっしゃるんだから!!出しゃばんないでくれる?』
と、アニは、お嫌なようだったが、
薬の副作用とその日の体調によっては、アニは耳の聞こえが悪くなり、呂律も回らなくなる。
そこで、病院での問診時、
医師や看護師は、アニの『宿泊施設での健康状態』について、まずアニにたずねてみて、要を得ない時は、ワタシの方を向くようになった。
まぁそうなるわな。
仕方がないのでワタシが答えようとすると、
アニはそれが気に入らない。
アニは、
喋ろうとするワタシを手で押し止め、
フガフガフガフガ…。
ワタシは、
アニに気取られぬように医師達に向かって、
アニの言わんとする事を後ろから小声で、
ボソボソボソボソ…。
ん?…これでは…まるであの、
ワイドショーで有名になった
『ささやき女将と息子の取締役』の謝罪会見
ではないか。
不謹慎だが今思い出しても笑ってしまう。
とにかく、こんな風で、
ワタシはアニの『スポークスマン』であった。
お女中
アニは、人生のほとんどを『縦社会』の中で生きてきたせいか、
『自分より上』だと思った人にはきちんと敬語を使い、不遜ながらも礼節を守るが、
『自分より下』だと思った相手には、
容赦のない言葉と態度で接する。
ワタシの事は、家族だからというのもあったろうが
勿論後者で、扱いは『お女中』のそれで、実際ワタシが日々やっていることも『お女中』のそれであった。
ウーバー
またアニは超のつく『せっかち』で、
『今』出てる症状は『今すぐ!』止めたいから、
『今すぐ病院へ連れてけ!』
『今すぐタクシーを呼べ!!』
『今』食べたいものは『今すぐ!』買ってこい!!
とまぁこんな感じで、
ワタシはアニの『ウーバー』でもあったのだ。
恋愛感情、絶対零度
また、
そうは言いつつも、
『お世話をするうち、家族愛以上の愛情が芽生え…』
と、思われた方もいらしたかもしれないが、
残念ながら、色っぺえ話は『皆無』である。
こんな人と、恋愛関係に落ちるわぁけが無い。
それどころか、
最初のうちは、容赦のないモラハラ、セクハラに驚いて、自分の居室に戻ってからシクシク泣いたり、駅のホームでメソメソ泣いたりしたものだ。
もし、
このハラスメント妖怪を相手取り、侮辱罪で裁判を起こしたなら、ワタシは100%勝てる自信がある笑。
しかし、
この根底に流れる『それでも家族やもんな!』というワタシの『強い想い』と、
夫に対して『ワタシが行く!』とタンカをきった手前、『後には引けん!何としてもやり遂げたる!』の矜持で乗り切ってきた。