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地元の方との出会いが楽しい悪天候の三宅島【1】

金曜日の21時半。
私は仕事を切り上げて、職場から竹芝に向かった。
フェリーターミナルでは、新潟、山口から集まった友人が待っていた。
22時過ぎ、黄色い船体のフェリー橘丸に乗り込む。
2等和室の船内に荷物を置きながら、島に帰るという男性と話をした。
「今日は揺れるよ~。港に着けるかどうかもわからないんだから」

この言葉に怯えつつ、デッキに出て出航を迎えた。レインボーブリッジをくぐり、見慣れた東京の夜景が遠ざかっていく。私たちは、ホッカイロを片手にデッキでカップスープを飲んだ。

23時半になると船は消灯時間となった。東京湾を抜け、次第に揺れが激しくなっていくのを感じ、船酔いこそしなかったものの、私はあまり寝付けなかった。

午前4時半。一斉に電気が付き、船内放送が流れた。天気予報が外れ、波が穏やかになったため、三宅島に入港出来るという。

5時、まだ真っ暗な三宅島に到着した。三宅島で
降りる人の多くは釣り道具を持っていた。
送迎の車でレンタカー店まで移動しているうちに、空の色は徐々に明るくなっていった。レンタカー店の彼は、友人の誘いで2か月前に愛知から三宅島に移住。自ら家に電気を通し、自ら食べる魚を獲る、といったこれまででは考えられない生活をしているという。

レンタカーを借りた頃には日の出の時間が近づいていた。
「とにかく島の東側に行こう!」
車を走らせ堤防によじ登り、堤防の一番先まで歩いて朝日を拝む。悪天候のはずが、美しい朝日が見れるなんて!海から昇る太陽は、はじめは赤かったが、徐々に薄黄色に変化していく。背後の雄山も、朝日を受けてオレンジ色に染まっていた。

30分ほど朝日を眺めた後、あてもなく島を一周してみることにした。
三宅島は、噴火を繰り返す火山島。島の中心の雄山は、いまだに火山ガスを発しているため、立ち入り禁止地域も残る。噴火の影響で、植物の遷移はまだまだ進んでいない地域も多く、溶岩の上でも育つススキやハンノキなど、低木ばかりの景色も特徴だ。
私たちは、島を一周しながら、噴火のジオスポットを見つけては、車を停めた。景色を眺めながら、あちらこちらで競うように鳴く鶯の声も楽しんだ。

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