生まれ変わらずともキャベツになりたい3

キャベツになったら何をしようか。

少し肌寒くなってきた頃、種となり土に潜る。
小さな仲間と共に、成長を待つ。
ゆっくりゆっくり、外の世界を待つ。

その時が来るまで、外の世界に思いを馳せよう。
キャベツとしてどう生きるか。
人間を捨てた私に、キャベツとして何ができるのか。

時々、不安になるかもしれない。
キャベツとして失敗してしまったらどうしようか。
大きくなれず、間引かれてしまったら。
こればっかりは人間の世界と変わらない。
仲間と言えど、勝負の世界なのだ。

でも少しの希望はある。
もし私が選ばれなかったとしたら、仲間に思いを託すことになる。
私の分の栄養も思う存分に吸収して、成長してくれるならそれもいい。
これはキャベツの特権かもしれないな。

とはいえ、はじめから諦めるのは良くない。
せっかくキャベツになったのなら、キャベツとして生き抜く覚悟だ。

寒い季節を耐え抜いて、大きく、甘く。
日の光を夢に見て、やさしく、柔らかく。
風に吹かれて、暖かく、穏やかに。

私は、立派なキャベツになるのだ。


キャベツになったら何をしようか。

春の太陽を浴びながら、どこかの誰かに届けよう。

野菜炒めか、焼きそばか、揚げ物のお供か。
それともやっぱりロールキャベツか。

どんな形でもいい。
あの日私が感じたのと同じような感情を、
どこかの誰かに届けられれば、それでいい。


そんなことを想いながら、今日も私は生きています。


【あとがき】
これで最後です。
なれますかね、キャベツ。
なりたいな、キャベツ。

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