【超短小説】年雄と雨と街灯
夜、年雄は雨に降られた。
帽子を被っていた年雄が、雨に気付いたのは、街灯に反射した雨を見たからだ。
街灯で見える夜の雨。
年雄は濡れる事も気にせずそれを見ていた。
なんだか懐かしい。
いつ頃のどこかを思い出すわけではないが、懐かしい。
不思議な感覚。
この景色に思い出などない。
多分ない。
でも何故か立ち止まって見ている。
あるはずのない懐かしさを感じながら。
忘れているだけかもしれない。
でも思い出さなくてもいいような記憶。
そんな気がする。
何故立ち止まったのか。
深く考えず、思い出さず、ただ懐かしさを感じ、胸を温める。
そんな雨の降られ方もたまにはいい。
いい夜だ。
浜本年雄40歳。
家に帰る途中、雨と街灯のキーワードで1つ思い出した。
中学生の頃、街灯の少ない田舎町に住んでいた年雄は、雨の日の街灯の下で、地元の不良に蹴られたあと、300円取られた事がある。