【超短小説】年雄と美しい日
仕事の帰り道、自転車を漕ぎながら年雄は思った。
今日はなんていい日なんだ。
特別何かあった訳ではない。
誰かに褒められた訳でもなく、ほとんど昨日と変わらない何でもない1日。
でも年雄は"いい日"そう思った。
理由は、空が美しかったから。
それだけだ。
朝、目を擦りながら空を見上げると、子供が絵の具で書いたような、ハッキリとした空だった。
目がパッと覚める感覚。
美しい。
その美しい空は、時間も関係なく、朝も昼も夕方も、夜になるまで、色が変わるだけで、ずっと美しかった。
美しいとは素晴らしい。
無条件の力。
多分、年雄はこの世が美しいから、明日があるんだと思う。
そんな事を考えながら、家に着いた年雄は玄関を開けた。
・・・きったねー部屋だな。
浜本年雄40歳。
次の休みに、一か月ぶりに部屋の掃除をしよう。