【超短小説】年雄と同じ話

年雄は、職場の先輩と呑んでいる。

先輩は楽しそうに、過去の武勇伝を年雄に話していた。

年雄は「マジっすか?」とか「えー!」なんてリアクションしているが、先輩のしている話は、10回以上聞いた事のある、同じ話だ。

なんなら、呑み始めの30分以降は、全部聞いた事のある話だ。

先輩「これお前に話した事あったっけ?」

年雄「なんですか?」

先輩「高校受験で他校と喧嘩になった話」

年雄「あー・・・聞いた事あると思います」

先輩「高校受験の日にさ・・・」

年雄が聞いた事あると言っても話し始める先輩。

なんで?

聞いたよ。その話。

何回も!

しかも、今聞いたって言ったよ!

なぜ止まらない?

年雄は初めて聞いた時と同じリアクションをしなくてはいけない。

たまに「そのあと大喧嘩したんですよね?」

ってフライングして、"聞いたよ、その話"をアピールしても止まらない。

話の最初から最後まで変わらず同じ話。

何故止まらない。

口に着いている油のせいか?

年雄はその日、聞いた事のある話に「マジっすか?」を20回は言わされた。

浜本年雄40歳。

先輩・・・暇っす。

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