【超短小説】年雄と気温
年雄は寒くて目を覚ました。
天気予報で気温0度と報じていた。
本格的な冬。
本格的な冬服に身を包んで仕事に出かける。
風が吹くと、寒いと同時に"痛い"も感じる。
空も一目で寒いと分かる。
青一色。
年雄は「嫌だなあ」とため息のように呟いた。
年雄は清掃業だ。
必ず水を使う。
寒くなると、ゴム手袋越しに水の冷たさを感じる。
仕事を始めて休憩までには、指先の感覚が無くなるほどだ。
年雄は1日で"はぁ"だとか"嫌だなあ"だとかを繰り返し呟く。
なんなんだよこの人生は。と考えてしまう季節。
仕事が終わり、自動販売機でホットコーヒーを買い、指先を温めながら一口飲む。
「ふぅ〜」最高にうまい!
年雄はこの瞬間ふと思う。
"なんだかんだで、好きでこの人生生きてるな"
浜本年雄40歳。
今年も冬がやってきた。
ありがたい。