【超短小説】年雄と山岡さん

年雄が子供の頃、"美味しんぼ"のアニメが始まった。
食を通じて、人間模様を描いたアニメだ。

年雄はその主人公、山岡さんに憧れた。
理由がある。

年雄が少年の頃は、まだ体罰が割と普通だった。
年雄は勉強嫌いで、宿題などしたことない。
忘れ物もクラス一位。
ぐうたら小学生だった。

先生からゲンコツやビンタを貰うのは日常だった。
日常なら体罰も慣れるものだ。
ただ、どうしても慣れないのは、皆んなが見てる前で叩かれる事だった。
恥ずかしさと、孤独感。
これだけは慣れなかった。

孤独を感じた時、癒やしてくれたのが、アニメや漫画、お笑いだった。
そのアニメの中に、美味しんぼがあった。

主人公の山岡さんは、ぐうたら社員。毎日副部長に小言を言われている。
でも、食の話になると、目の色を変え、筋を一本通す。

ぐうたら少年年雄は、山岡さんに憧れた。

"俺も来る時が来たら、目の色を変え、筋を一本通すぞ"

来る時がいつ来たか分からぬまま、年雄は大人になった。

浜本年雄40歳。

新人のバイト君に、副部長のように小言を言う
、割と真面目に働く大人だ。

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