【超短小説】年雄、良かれと思って
年雄は電車に乗っていた。
年雄が座っている前に、綺麗な女性が立っている。
年雄は勇気を持って、手紙を書き、その綺麗な女性に渡した。
「これ、読んでください」
女性は少し戸惑い「彼氏いるんで困ります」と答えた。
年雄は「読むだけでいいんで」と頭を下げた。
女性は「キモ」と言ったあと、手紙をくちゃくちゃに丸めて、年雄にポンっと投げた。
そして次の駅で降りて行った。
年雄は自分の行動が間違っていた事に気付き、落ち込んだ。
年雄はくちゃくちゃになった手紙を広げた。
"スカートのファスナーが開いてます"と書かれている。
どう伝えるのが正解だったのだろうか?
声に出すと女性が恥をかきそうだし、ジェスチャーだと変なおじさん感がハンパない。
良かれと思っての手紙だったが、伝わらないもんだ。
浜本年雄40歳。
まだまだ経験不足。