【超短小説】年雄の1人現場
年雄は清掃員だ。
ビルやマンションの廊下を掃除して周る。
普段は3人から4人で作業するが、今日はバイトが2人同時に休みになったので、1人で作業する事になった。
でも大丈夫。
年雄はもうベテランだから。
比較的楽な現場に変えてもらい、のんびり作業する。
廊下を機械で磨いて、水で流し、水を切る。
手間はかかるが、1人で出来る。
何も問題ない。
昼休み以外は。
昼休み。
ご飯を食べたあと、やる事がない。
いつもは昼寝をしたり、バイトの子とおしゃべりをしたり、携帯を見たりして時間を潰す。
今日に限って眠くなく、おしゃべりする相手もいないし、携帯の充電も切れそうだ。
たかだか40分。
暇だ。
いつもは足りないと思う昼休み。
今日はもう働きたい。
でも、現場に入る時間は決まっている。
早く入っても苦情がくる。
車の中で1人、やる事なく40分。
苦痛。
40分あれば、何が出来るだろうか?
無駄な40分の使い方。
悔しい。
浜本年雄40歳。
車の中で35分たった頃気付く。
散歩でもすればよかった。