【超短小説】年雄と尖り
若い時には、誰でも一度は尖っていた時期があるのではないか。
年雄もそうだった。
それはヤンキーとか、そういった尖りではない。
年雄が1番尖っていた時期は、上京したての18歳の辺りだろう。
田舎者。
舐められてはいけない。
都会に染まってはいけない。
何故かそういう思いだった。
田舎の訛りがバレないよう、語尾に"じゃん"や"っしょっ"などをつけて喋っていた。
バイトの飲み会では、「俺はそうは思わない」と意味なく人の会話を否定してみた。
舐められないように。
結果、年雄の周りには誰もいなくなった。
もともと尖るタイプでもない男の上京尖り。
尖り方も、毛でチクチク程度のもの。
無理に尖り。
まさに田舎者。
恥ずかしい。
浜本年雄40歳。
丸くなったと言えるほど尖っていなかったが、若い時ほど、自分に素直にした方がいいかもね。