【超短小説】年雄の初恋
年雄の初恋は、小学4年生の時だった。
隣のクラスのひさ子ちゃん。
年雄はそのひさ子ちゃんを、中1まで4年間も好きだった。
不思議なのは、好きになった理由がまったく分からない事だ。
同じクラスになった事もなく、話もした事がない。
好きだった4年の間、声もほとんど聞いた事がない。
好きになる理由がまったくない。
強いて言うなら・・・顔?
今思えばそんなにタイプでもない。
理由のないトキメキ。
初恋ってそんなものかな。
むしろ最近は恋心より先に、好きになる理由を欲しがっている気がする。
恋に理由なんかいらないんだろうな。
年雄はSNSで初恋のひさ子ちゃんを見つけた。
幸せそうな家族写真をアップしていた。
素敵な人生でありますように。
浜本年雄40歳。
でもやっぱり顔がタイプってわけではないと思う。