【超短小説】年雄、今日はよし。

昨日、行きつけのBARで偶然隣に座った女性と話が合い、今日一緒に映画を観る事になった。

年雄にとって、女性と映画に行くのは久しぶりだった。

映画は、TVシリーズから映画化された話題の作品だ。

2時間30分もある大作だった。

映画を観終わると、食事に向かった。

話の内容はもちろん、映画の話。

「あそこのあのシーンがTVからの伏線になってたよね?」と彼女が聞いてくると、年雄は「そうそう!」と興奮気味に返した。

さらに彼女が「複雑な内容だったね。理解出来た?」と聞いてきたので、「半分くらいかな?」
と照れ笑いをした。

食事を終え彼女と別れたあと、年雄はどっと疲れた。

年雄は嘘をついていた。

「半分くらいかな?」と返した内容は、ほぼ全く理解していなかった。

だって、TVシリーズから一度もこの作品を観た事がないから。

年雄は下心から、今日一日ずっと嘘をついていた。

でも今日はいいよね?

だってエイプリルフールだもの。

浜本年雄40歳。

バレなきゃいいさ。

二度と会う事ないし。

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