【超短小説】年雄と占い師
年雄がアーケードを歩いていると、占い師のおばちゃんと目が合った。
年雄は占いが好きな方だ。
好きな方だが、積極的に関わっている訳ではない。
だから、"目が合った"ぐらいの偶然に、縁を感じて占ってもらう。
手相占いだ。
おばちゃんが「何を見ましょう?」と質問してきた時に気付いたが、これといって何もない。
質問の数によって、料金も増えるらしいので年雄は少し考えて答えた。
「目が合った時、何が見えました?」
手相と関係ない質問だと言った瞬間に思ったが、おばちゃんは「女難の相」とすぐに答えた。
「女難ですか?何に気をつければ・・・?」
と聞いたら「初めて会う女性。会話」とおばちゃんは答えた。
「どんな会話を気にすれば・・・?」
「お金。財布の紐は固く」とおばちゃんのアドバイス。
年雄は具体的なのか、抽象的なのかも分からず、占いを終えた。
おばちゃんに三千円払った。
数分の出来事。
年雄は帰りながら思った。
"初めて会った女性、占い師のおばちゃんと会話したら、数分で三千円無くなった"
女難の相。
占い・・・当たるもんだ。
浜本年雄40歳。
占いは好きだが、積極的には関わらない。