【超短小説】年雄と水アメ
年雄はばあちゃんが作った水アメが大好きだった。
ばあちゃんは年雄の実家の隣りに住んでいた。
年雄が小学生の頃、ばあちゃん家に遊びに行くと、大きなビンいっぱいに入った水アメを出してくれた。
大きなビンは、味付け海苔が入っていたビンだ。
そこにばあちゃん自慢の手作り水アメがいっぱいに入っている。
年雄が遊びに来ると、ばあちゃんは割り箸を持ってきて、パキッと割ると水アメに差し込み、水アメを絡めてグーっと持ち上げた。
そしてグルグルと起用に割り箸に絡めて年雄に「はいどうぞ」と渡した。
年雄はばあちゃんの真似をして、グルグル水アメを回して口に入れた。
溶けるような甘さに、年雄は自然と笑顔になった。
ばあちゃんの水アメのビンは、いつ行ってもいっぱいだった。
「全部食べたい」と年雄が言うと、「この水アメは減らないから無理だよ」とばあちゃんは言った。
「減らないなんてウソだ」と年雄が言うと「これは魔法のビンだから」とばあちゃんは答えた。
どう見ても味付け海苔のビンだったが、いつ行っても減らないので、本当に魔法のビンかも知れないと年雄は思った。
あの時食べた魔法のビンに入っていた水アメ。
あの水アメより甘い物は、まだ口にした事がない。
浜本年雄40歳。
ばあちゃんは魔女だったかもね。
もう聞けないけど。
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