【超短小説】年雄、やっぱり基本

年雄が中古の電子ピアノを買って、2週間ほど経つ。

触った事のない楽器。

ドの位置も分からない。

楽譜?そんなのもちろん読めません。

でも大丈夫。

今の時代、動画サイトを見れば無料でピアノの弾き方を教えてくれる。

その動画を観ながら、鍵盤の位置を覚え、動画通りに弾けばいいだけ。

一か月もすれば、名曲の一曲や二曲は弾けるさ。

年雄はこういった失敗を何度も経験している。

今回も同じ失敗。

動画通り鍵盤の位置は覚えられる。

ただの暗記だから。

でも全く弾けない。

何故弾けないのか分からない。

つまり、対策のしようがない。

答えは知っている。

基本だ。基本が分かっていないから次に進めない。

いつだってそうだ。

結局は基本。

なんとなく出来るところまでいったら、必ず壁に当たる。

壁を乗り越えるのに必要なのは、基本。

基本は何でも教えてくれる。

何故できないか。何故できたのか。

基本の大切さは分かっている。分かっていながら、つい飛ばしてしまう。

何故?

どのジャンルも基本練習は淡々としてつまらないからだ。

でも結局1番大事な事なのだ。

今の年雄に残された選択は2つ。

基本をコツコツ練習するか、電子ピアノを売りに出すか。

浜本年雄40歳。

結局近道なんて通った事がないもんだ。

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