【超短小説】年雄と紙のトランプ
スーパーでお弁当とお茶、あとティッシュにトイレットペーパーを買ったら、何かのキャンペーン中か、くじを引ける事になった。
年雄は店員さんに言われるがまま、くじを引いた。
「当たりです」と言われ、紙のトランプを貰った。
年雄は家に帰って「せっかくだし」と言ってトランプを始めた。
1人で。
1人で7並べ。
別に不思議な事ではない。
子供の頃はよくやっていた。
1人で4人分カードを配り、1人で4役を演じる。
意外と楽しい。
もちろん相手が何を出すか分かっている。
1人だから。
でも、あえて演じる。
「おい、ダイヤの4持ってんの誰だ?」
なんて具合に。
ゲームも終盤に差し掛かった頃、年雄は部屋の暑さを感じ、窓を開けた。
強い風が部屋に入って来た。
紙のトランプは、勢いよく部屋を舞った。
年雄は思った。
「そのままゴミ箱に入ってしまえ」
浜本年雄40歳。
楽しくも悲しい平日の午後の出来事。
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