【超短小説】年雄、あの時投げたあれの名前をまだ知らない
年雄が小学生の頃の話だ。
年雄は近所の公園で、同級生6人と遊んでいた。
すると、突然雨が降ってきた。
辺り一面を一瞬で浸すような大雨。
普通なら慌てて家に帰る所だが、年雄達は何故かテンションが上がった。
濡れた土を丸めて泥団子にし、泥団子合戦が始まった。
当たっても痛くないのををいい事に、みんな全力で投げ合った。
そんな中、年雄が土を掴んで丸めた時、土とは違う手触りを感じた。
でもそんな些細な事は気にしないほど、泥団子合戦は熱気に包まれていた。
年雄が違和感のある泥団子を投げる瞬間、鼻を刺すような臭い匂いがした。
年雄はそのクサ玉を友達の顔面にヒットさせた。
クサ玉を顔に受けた友達は、一瞬動きを止めたがまた泥団子を作り、泥団子合戦を続けた。
後日、その公園の看板に、犬のフンは持ち帰るようにと、注意書きが書いてあった。
浜本年雄40歳。
あれから30年以上たった今でも、
あの日投げたあれの名前をまだ知らない。