【超短小説】年雄の志

年雄には"人に迷惑をかけない"という志がある。・・・というか、最近そういう事にした。

昔は違った。
昔は"人の為に行動する"だった。
悪い事だとは思わない。

ただ年雄の場合、人の為に行動すると、見返りが欲しくなる。
自分で勝手にやっている事なのだが、見返りをどうしても求めてしまう。

"お前の為にやってんだぞ。返せ"

どうも品がない。

なので、最近志を変えた。

"人に迷惑をかけない"

なかなかいい志だ。
大人を感じる。

年雄はこの志を気に入っていた。
だから、人に迷惑をかける奴にイライラする。

バイトのケイくんが、今日も遅刻してきた。
ケイくんが遅刻した分は、みんなでフォローする。

"人に迷惑かけやがって"

年雄は班長として、志を持つ人間としてケイくんを怒鳴りつけた。

「何時だと思ってるんだ!みんなに迷惑をかけるな!」

年雄が突然怒鳴ったせいで、みんなビックリした。

ケイくんが言った

「年雄さん、急に大声出したら、近所迷惑ですよ。落ち着いてくださいよ。年雄さんらしくない」

浜本年雄40歳。

来週辺り、新しい志でも考えよう。

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