【超短小説】年雄とプロ

この社会には、いろんなプロが存在する。
そして、プロに出会う時は、いつだって突然だ。

年雄はハンバーガーを買いに来た。

お昼時だったせいで、列が出来ていた。

年雄は最後尾に並んだ。

ちょうど半分くらい進んだ所で、プロと遭遇した。

少し大きめの声で電話をしているおばちゃん。"電話してたから気付かなかった"風に年雄の前に割り込んできた。

そう、横入りのプロだ。

プロは横入りしたあとも、声をかけづらくする為電話をやめない。

しかし、年雄も運のない人生を歩んできている。この手のプロとの遭遇は初めてではない。

年雄は「すみません」と声をかけた。

プロは無視した。

年雄は少し大きめの声で「すみません」と声をかけた。

無視。さすがプロ。

普通ならここで諦めるだろう。
だが、年雄はプロの肩をポンポンと叩き、「すみません」と言った。

プロは年雄の目を見る事なく、軽く会釈して電話を続けた。

"このプロ、根っからのプロだ"

年雄はついに必殺技を使った。

「すみません!店員さん!ここのお店は横入りを許すお店ですか?!横入りされたんですけど!」

時が止まった。

この必殺技は、自分も晒される諸刃の剣だ。
年雄の顔は、真っ赤に染まった。

プロは電話をしたまま、何事もなかったかの様にお店を出て行った。

浜本年雄40歳。

そのあと食べたハンバーガーの味は、よく覚えていない。

いいなと思ったら応援しよう!